無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

2020年・私的ベスト10~音楽編(2)~

2020年ベストアルバム10枚の後半です。順不同!

After Hours/The Weeknd

After Hours (Deluxe)

After Hours (Deluxe)

  • ザ・ウィークエンド
  • R&B/ソウル
  • ¥2241

ザ・ウィークエンドはR&Bの最新型と言えるアーティストでありながら、マイケル・ジャクソンをはじめ80年代からの影響を隠していません。
本作は今まで以上に80年代色が強く前面に出ていて、あえてチープな音作りを意識したようなところも見受けられます。
ダサくならないラインを絶妙に見極めるセンスはさすがで、80年代リアルタイム組としてはこういう音に抗えるわけがないのですよね。

Future Nostalgia/Dua Lipa

Future Nostalgia

Future Nostalgia

  • Dua Lipa
  • ポップ
  • ¥1935

80年代ということでいうと2020年避けて通れないのがデュア・リパです。
EDMの歌姫としてカルヴィン・ハリスなどとコラボしてましたが、このセカンドアルバムは本当にハマりました。リピート率で言えば2020年もっとも聞いたアルバムです。
ウィークエンドがダサくならないラインを攻めてきたとすれば、デュア・リパはダサさを突き抜けたところまで行ってます。だからカッコいい。曲名も「フィジカル」で、オリヴィア・ニュートン・ジョンが2020年にタイムスリップしたみたいなことをやっているわけですから。
80年代というのは全世界的にここ数年のポップミュージックの大きなキーワードになっているわけですが、いよいよここで極まったなという感じがしました。

Notes on a Conditional Form/The 1975

音楽のカテゴリやジャンル分けにどこまで意味があるのかとは思いますが、
ヒップホップのレコード売上がロックのそれを超えたというニュースを聞くとそれなりに思うことはあります。
ドラム、ベース、ギター、ボーカルというオーソドックスな編成のロックバンドが時代遅れと見られてしまう時代の中でロックバンドはどういう音を鳴らすのかというのは大きな命題のひとつでしょう。
2020年に立て続けにリリースされたストロークスパール・ジャムの新作も、ベテランバンドがそこにどう向き合ったのかを伺わせる内容でした。The 1975はこの命題に対して、最も的確な答えを出しているバンドのひとつだと思います。
やはりここでも80年代色を交えつつ、クラブミュージックからギターポップ、パンク、オルタナやサイケなど、縦横無尽にジャンルの壁を越えてきます。サウンドの統一感のなさに対し、アルバムのテーマがきちんとあるところもサブスク時代においては貴重だと思います。

Woman In Music Pt.III/HAIM

R&Bやヒップホップでは女性アーティストの活躍が目覚ましいですが、ロック・ポップスで2020年もっともそれを感じたのはチックス(元ディクシー・チックス)の新作とこのハイムでした。
所謂インディーポップな音でありながらそのセンスの良さで数多くのセレブともコラボしてきた彼女らですが、相変わらず音作りにもソングライティングにもハイセンスさと育ちの良さが見え隠れしています。
Metoo以降の流れを感じさせるようなタイトルですが、そこまで肩肘張らずに自然体なのも彼女ららしいのかなと思います。

folklore/Taylor Swift

テイラー・スウィフトが突如ドロップした8作目。
ザ・ナショナルのアーロン・デスナーをパートナーに迎え、コロナ禍でのステイホーム期間に完全リモートで作り上げたとのこと。
近年のポップ路線や政治的メッセージ色は影を潜め、聞く者の心に寄り添うような優しい音作りが印象的。フォーキーという感想を多く目にしたが、確かに音楽的にもその要素があり、歌詞の物語性も強い。新型コロナが世界中を襲った2020年だからこそのアルバムで、今後もこの方向で彼女の音楽が製作されるということではないと思う(年末にリリースされた新作『evermore』はまだきちんと聴けてません)。彼女はまた「ミス・アメリカーナ」の世界に戻っていくはずで、この静謐で美しいアルバムは2020年がどういう年だったのかを聞くたびに思い起こさせるものになると思います。

以上です。
その他、曲単位で2020年個人的に思い入れのあるものについてはSpotifyのプレイリストにまとめましたのでよろしければご参照ください。

2021年もいい音楽にたくさん出会えますよう。今年もよろしくお願いします。