無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

リアム、お前は漢だ。

■BEADY EYE JAPAN TOUR 2011
■2011/09/08@Zepp Osaka
 震災の影響で延期となった初来日ツアー。サマソニの出演が初来日ということになったが、リアムは震災が発生した当初から日本にメッセージを送り、チャリティのためのライブを行うなど、オアシス時代からサポートしていた日本のファンのために熱い男気を見せてくれていた。客入れのSEは80年代以降のUKインディーロックの歴史(笑)的なセレクトだった。ストーン・ローゼズの「アイ・アム・ザ・レザレクション」が終了した瞬間に客電が落ち、メンバーが登場。ステージのバックには「BEADY EYE」のロゴが大写しになっている。それが程なくして日の丸に変わり、ビートルズアクロス・ザ・ユニバース」のカバーからスタート。この曲は東日本大震災復興支援チャリティーシングルとして発表されたもので、改めてこのツアーでその姿勢を明確にしたというところだと思う。リアムはプリティ・グリーンのパーカーコートを着、下はデニムといういでたち。オアシス時代とほぼ変わらない。ラフだが、非常に決まっている。
 ところが、どうもマイクの調子がおかしい。リアムがマイクに口を近づけて大きく歌うと、たまにハウリングを起こす。曲の終盤になるとリアムは明らかにイラついていてスタッフに向かって大声で怒鳴っている。曲が終わるとマイクをスタンドからはずし、そのまま袖の方に投げてしまった。すぐにスタッフが代わりを持ってきてセッティングしたのだけど、今度はモニターが小さい、上げろとしきりに指示を出す。曲間になるとアンディと一緒に袖でスタッフと何やら話。イラついてるのは明らかで、正直最初は帰っちゃうんじゃないかとハラハラしてた。しかし、リアムはモニターの調子にはイラつきながらも、MCではちゃんと客に話しかけるし、少しでもいい状態でライブをやれるようにとあれこれ指示を出していた。当然と言えば当然だが、怒ってステージを放棄することもなく、バンドの顔としてその責任を全うしようとしていた。怒って帰っても、フォローしてくれる兄貴はもういない。アルバムでもそう思ったが、このバンドの中心は自分だという自覚と責任感がビーディ・アイのリアムにはある。ライブが進むにつれて、その思いはより強く確信に変わって行った。
 バンドは淡々と演奏をこなしているように見えるが、安定はしている。クリス・シャーロックはたびたびスティックを高く上に投げるが、キャッチに失敗していたのはご愛嬌。改めてライヴで聞くと、曲の粒はやはりそれなりに揃っている。「フォー・レター・ワード」のイントロが鳴り響いた瞬間はぐっと体が持ち上がるような高揚感があるし、「ビートルズ・アンド・ストーンズ」や「ブリング・ザ・ライト」のようなプリミティブなロックンロールはバンドの力がよくわかる。「ザ・ビート・ゴーズ・オン」のようなスケールの大きな曲もクライマックスとして機能していた。しかし、会場全体が一緒に歌い上げるようなアンセムはない。良くも悪くもリアムの圧倒的な存在感がライヴを成立させているという印象。
 シングルのカップリングも含め、アルバムの曲も全てやって終了、という、まさにアルバム1枚しか出してない新人バンドのライヴというものだった。オアシスの曲をやれば盛り上がるのはわかっている。しかし意地なのかプライドなのか、リアムはそれをしない。正解だと思う。今日のライヴはリアム的には満足行くものではなかったのかもしれない。日本でやるならもっといいステージを見せたかったかもしれない。でも僕はビーディ・アイのリアム・ギャラガーのプロフェッショナル意識と男気を感じることができた。今はそれで十分である。

1.Across The Universe
2.Four Letter Word
3.Beatles and Stones
4.Millionaire
5.Two of a Kind
6.For Anyone
7.The Roller
8.Wind Up Dream
9.Bring The Light
10.Standing on the Edge of the Noise
11.Kill For a Dream
12.The Beat Goes On
13.Three Ring Circus
14.Man of Misery
15.The Morning Son

16.Wigwam
17.Sons of the Stage