無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

シロップ劇場~サイケデリック後遺症~

syrup16g tour 2015『Kranke』
■2015/07/03@オリックス劇場

 昨年の「再発」ツアーの時は、あのシロップが復活するという事実に興奮を抑えきれなかった。「五十嵐は生きていたのか?」「歌えるのか?」「そもそも、人前に出られるのか?」など、様々な思いを胸に会場に赴いた。それに比べれば今回は冷静にフラットな気持ちでライヴに臨めた気がする。とは言ってもまたいついなくなるかわからないので、シロップのライヴを見られる現実を当たり前だとまでは思えない。こうして五十嵐がステージに立つことを幸せに思うばかりだ。
 会場のオリックス劇場は3階席まである椅子席のホール。キャパは2000人クラスか。個人的に椅子席でシロップのライヴを見るのは2008年の武道館以来になる。新作ミニアルバム『Kranke』から「songline」のSEが流れる中緞帳が上がり、3人がステージに現れる。「新曲やりに来ました」という五十嵐の言葉通り、『Kranke』からの曲はすべて演奏。昨年の『Hurt』も含み、過去の曲がそこにちりばめられるセット。大きく分けると、「冷たい掌」から「Stop brain」までの前半、「My Song」~「吐く血」までの中盤。そして後半という感じ。前半は割と激しい曲を中心に攻める。五十嵐のテンションは高かったようで、寝転がってギターを弾いたりしていた。ライブハウスだとよく見えなかったかもしれないが、ホールだったので上から寝てるところもよく見えました(自分は2階のせり出し席だった)。
 今回のセットでキーになるのは中盤だと思う。ミディアムテンポの曲を中心にじっくり聞かせるパートという感じで、『Kranke』のジャケットにもあったオイルアートのビジュアルがスクリーンに映し出されてサイケデリックな雰囲気を醸し出す。意図的なのかどうか、『HELL-SEE』の曲がここに固まっている。攻めているときにはかなり歪んでいるギターが、ここでは完全にニューウェーブの音の作り。もっと簡単に言えば、ポリスのアンディ・サマーズ。アルペジオになると特にまんまである。個人的にこういうタイプのサウンドが好きなので、『HELL-SEE』は嫌いになれないアルバムだし、この日もこの中盤が聞いてて一番楽しかった。
 何か不満があるのかというくらいに中畑が叩きまくる「Share the light」イントロのドラムを合図にライヴは一気にクライマックスに突入する。「天才」「真空」「神のカルマ」など、怒涛の展開。2階席だったのでメンバーの表情までは見えなかったけど、やはり昨年のツアーよりもリラックスして演奏自体を楽しんでいたような気がする。五十嵐はMCのたびに「ありがとう」を連発していた。過去の曲は万遍なく選ばれていたように思えるけど、『COPY』からは1曲もなかった。昨年のツアーではやっていたので意図があってのことなのかはわからない。本編後半の展開の中で「生活」くらいはやってほしかったかなと思う(東京ではアンコールでやっていたらしい。クソっ)。
 あと椅子席で、全員が立って見ていたわけではないのもあって僕が一番いいと思った中盤の展開でも客席の空気としてはダレる部分も正直あった気がする。隣のやつは寝てたし(ありえない)。スタンディングならそんなこともなかったのかもしれない。あとは昨年のツアー時に言っていたように「このツアーが終わったら外出しない。外に出るの苦痛」にならないことを祈るばかり。また、待ってます。

■SET LIST
1.songline(SE)
2.冷たい掌
3.生きているよりマシさ
4.To be honor
5.HELPLESS
6.Stop brain
7.My Song
8.明日を落としても
9.正常
10.シーツ
11.吐く血
12.Share the light
13.天才
14.真空
15.パープルムカデ
16.神のカルマ
17.Thank you
<アンコール1>
18.vampire's store
19.落堕
<アンコール2>
20.リアル

Kranke

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