無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

20周年、実りの季節。

BILLBOARD BEST 2011-2016

BILLBOARD BEST 2011-2016

 ノーナ・リーヴスが2011年から2016年まで在籍したBillboardレーベル時代の曲を集めたベスト盤。この間彼らがリリースしたアルバムはオリジナルアルバム3枚、そして洋楽カバーシリーズの『CHOICE』I~IIIの計6作。非常に精力的にレコーディングを行っていたことがわかる。本家ノーナとしての活動の他、西寺郷太は楽曲提供からプロデュース、執筆活動にメディア出演とマルチな活躍を続けてきた。奥田健介はレキシ、小松シゲル佐野元春&THE COYOTE BANDを中心に他のアーティストのライブやレコーディングに参加するなど、3人共に働きすぎじゃないかと思うほどの活躍だった。
 ファンは当然そうした活動の数々に目を向けてきているわけだけど、この間ノーナのアルバムはどれも素晴らしいものだったにもかかわらず、今イチ世間のリアクションが物足りない気がする。『POP STATION』も『FOREVER FOREVER』も『BLACKBERRY JAM』もノーナの魅力が詰まった良作だし、『CHOICE』シリーズでの選曲の妙とオリジナルへの愛は80年代洋楽で育った世代はもちろん、それ以外の人にもアピールするものだったと思う。(一時期は『CHOICE III』でのワム!三昧を聞きながら「噂のメロディ・メイカー」を読むのが楽しみでした)もちろん、ノーナへの注目は上がってきていると思うし、ライブの動員も順調だし、バンドとしてはいい状態なのだと思う。しかし、それでも彼らの持つ音楽性に対してまだ世間の評価は追いついていないと思う。むしろ同業者からの評価が非常に高い。正直ミュージシャンズ・ミュージシャンの域を出ていないような気がする。ファンとしてはそれをもどかしいと思いつつ、宝物のような彼らの音楽を愛でることに喜びを感じるのですが。20年間、彼らは洋楽をベースとしたJ-POPのお手本として全くぶれない作品を積み重ねてきた。このベストにも収録された『BLACKBERRY JAM』収録の「HARMONY」の歌詞に彼らの本音とプライドが現れているような気がする。「ひと昔前まで俺たちは ミスター・マニアックと呼ばれたけど 今じゃそれぞれのスキルだけを 武器にして平和な音楽を繋いでる」。彼らと同世代の自分にとってはノーナのような、80年代を下敷きにした音楽が広く認められて欲しいと切に願うし、ここ最近のシティポップ感あふれるバンドやアーティストの盛り上がりを見ているとそんな時代が近づいて来ているのかもしれないとワクワクする。そこにばっちりとノーナ・リーヴスがハマるはずと思う。なんたってこっちは20年前からやっているんだから、年季が違う。
 先に出た2010年までのベスト盤『POP’N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES』と合わせて聞くと彼らの歩みがよくわかる。そしてこの秋には再びワーナーミュージックに復帰し、新作アルバムがリリースになるという。ノーナの季節はもうすぐそこまで来ている。


ノーナ・リーヴス(NONA REEVES) 「O-V-E-R-H-E-A-T」(オーバーヒート)MV