若さのイメージ。
■佐野元春&THE COYOTE BAND ツアー2018「MANIJU (マニジュ)」
■2018/03/17@札幌市教育文化会館大ホール
佐野元春&THE COYOTE BAND、2017年リリースの最新作『MANIJU』を引っ提げてのツアー。
『MANIJU』というアルバムは非常に爽やかで、鮮烈で、端的に言うと若々しいアルバムだった。
還暦を過ぎた佐野元春が無理して若作りしているというのではなく、今を生きる若者のための音楽を、かつて若者だった自分たちが作ってみようという大きなチャレンジだったと思う。
2001年以降、佐野元春の音楽には現在の日本で生きることの困難さや怒りなどが様々な表現として現れていたのだけれど、『MANIJU』ではそれは抑えられている。
もちろん根底にはあるのだけれど、それはそれとして、日常にはいいことも楽しいこともあるじゃないか?とでも言うような、ささやかな希望と陽性に満ちているアルバムなのだ。
そんな若々しいアルバムなので、ライブも当然、溌剌としたものになるのではと思っていた。そして、実際にそれは予想以上だった。
THE COYOTE BANDとの活動もすでに10年以上が経つ。佐野元春とひと回り以上違うミュージシャンとのコラボとして始まったバンドだが、既にメンバーも40を超え、ベテランと言っていいキャリアをそれぞれ築いている。
『MANIJU』に現れる若々しさと、ミュージシャンとしての熟練。相反するような二つの要素が交わるところに、今回のツアーの魅力がある気がした。
ライブはアンコールを含め、全体を大きく3つに分けた構成だった。THE COYOTE BANDとのこれまでの道程を総括するような第1部。休憩をはさんで、『MANIJU』をメインにした第2部。
一つ一つのパフォーマンスについて書くとキリがないので、ひとつだけ。「純恋(すみれ)」の演奏が本当にキラキラしていて、感動した。
10代の初恋のドキドキや胸がキュンとする感覚。それを衝動としてロックンロールにしたような、青くて真っ直ぐな曲だ。『MANIJU』の中で最初にレコーディングしたのがこの曲だったそうだ。
「10代の若い子たちのために」と、元春は言っていたと思う。まさに、今回のアルバムの若々しさを象徴する曲だと思う。
今のこのモードを元春は「新・佐野元春」と呼んでいた。思いのほかウケたので、何度もくり返し口にしていた。
確かに妙に面白いフレーズだなと思ったのだけど、あながち外れてもいないのかもしれない。
そして第3部はアンコール。THE COYOTE BANDより過去の、ヒット曲を演奏するファンサービス。
しかしここでも、やはり『MANIJU』らしい選曲だった。特にに2度目のアンコール。
「ヤァ!ソウルボーイ」に「スウィート16」である。自分の中の熱いロックンロールやソウルを、もう一度再生しようと90年代に元春が作った曲だ。そこから20年以上が経った今も、きちんと同じ意味を持って演奏されている。逆に、今回のツアーで演奏されることにこそ意味があると言っていいと思う。
本編で演奏されてもいいくらいだと思ったが、「THE COYOTE BANDのツアーだからね」と元春には一蹴されてしまいそうだ。
そしてラストは「アンジェリーナ」。普段のツアーでもそうだけど、この曲は元春にとって全ての出発点であり、ロックンロールを演奏する資格があるのかを自らに問い直すための曲なのだと思う。そして僕は佐野元春が「アンジェリーナ」をカッコ悪く演奏するところを見たことがない。
THE COYOTE BAND、そして自身が歩んできた長い道のりを元春は「みんなのおかげだ」と何度も言っていた。その言葉は、そのまま元春に返そうと思う。僕が今でもロックンロールを好きでいられるのは、あなたのおかげなのです。
- アーティスト: 佐野元春& THE COYOTE BAND
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■SET LIST
1.境界線
2.君が気高い孤独なら
3.ポーラスタア
4.私の太陽
5.紅い月
6.いつかの君
7.空港待合室
8.やさしい闇<休憩>
9.白夜飛行
10.天空バイク
11.悟りの涙
12.新しい雨
13.世界は慈悲を待っている
14.La Vita e Bella
15.純恋(すみれ)
16.禅ビート
17.マニジュ
<アンコール1>
18.新しい航海
19.レインガール
20.約束の橋
<アンコール2>
21.ヤァ!ソウルボーイ
22.スウィート16
23.アンジェリーナ