無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

救世主物語、完結、だが。

マトリックス レボリューションズ 特別版〈2枚組〉 [DVD]

マトリックス レボリューションズ 特別版〈2枚組〉 [DVD]

 「リローデッド」で放り投げられたままの様々な謎をどう着地させるのか、そして世界の運命はどうなってしまうのか?と、散々期待持たせて煽った結果がこの完結編です。そりゃあねえだろ!
これまで「マトリックス」を「マトリックス」たらしめていた驚愕のアクションシーンは、マトリックス=仮想現実の中だからこそ可能だったもので、シーンの大半が現実の世界で描かれるこの「レヴォリューションズ」は、アクションを期待している人には物足りないものだろう。人類を滅亡させるべく地中を侵攻してくるセンティネルの大群の総攻撃シーンは結構面白いが、ちょっと長いかな。前作まで脇役だった人たちが一生懸命戦って死んでいくのは、ストーリー的には燃える部分もあるけれど、「いや、ていうか主人公は何してるのよ」と正直思ってしまう。
 「マトリックス」的アクションが堪能できるのはモーフィアス達がメロビンジアンの所に襲撃していくシーンと、おなじみラストのネオ対スミスのシーンくらい。この最後の対決シーンが、いろんな所で言われているように、まんまドラゴンボール天下一武道会決勝です、って感じのグラフィックで笑ってしまう。圧倒的にスミスにやられてしまうネオだが、それでも彼が勝つのは、彼が主人公であり、救世主だからであって、スミスに放ったラストの一撃は(やられたスミスの顔が歪む)映像も含めて見事に日本のマンガの実写化に成功していると言える。努力、友情、勝利、愛。要するに監督はこれがやりたかったんだろう。そういえば、最後の戦いを終えて、機械の触手に持ち上げられるネオの姿は王蟲の群れの中に身を投じたナウシカを彷彿とさせるものでした。
 で、いろいろそれらしく含みを持たせた様々な謎は、なんだかよくわからないままネオの自己犠牲の前にむりやりなハッピーエンドとしてまとめられてしまう。アーキテクトやオラクルの言葉は、むやみに映画をわかりにくくさせているだけなんじゃないかと思えてきてしまう。ネオが世界を救うための切り札として持ち出したのがスミスとの対決と言うのも、どうなんだろう。そもそも1作目の時点ではスミスってそこまでシリーズの中で重要な位置になるキャラじゃなかったんじゃないかという気もする。大きく広げた風呂敷をなんとか収めようとして考えた結果なんだろうけども。話としては、まとまったということなんだろうけど、見ている側からするとどうにもすっきりしない完結編でした。