無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 1999 in EZO

■1999/08/21-22 石狩湾新港
・前準備
 去年の豊洲フジロックとは訳が違う。朝始まって夜終わるのではない。昼始まって翌日の早朝まで続く。行く方にも相当の覚悟が必要だ。夏休みにはジョギングで体力and下半身強化を図った。万全だ。
 持ち物。これは大事。長丁場だし一晩明かさなくては行けない。北海道の夜は夏とはいえ甘く見てはいけない。天気もどうなるかわからない。あらゆる場合を想定してサバイバルを心がける。
 虫除けスプレー/レジャーシート/ゴミ袋/携帯カイロ/雨合羽/折り畳み傘/タオル/替えTシャツ/替えズボン/セーター、このあたりが必須。着替えは 3、4着必要だろう。当日の天気は曇りのち晴れ。だが前日に雨が降ったため会場の地盤は悪いかもしれない。一抹の不安を残しつつ眠れない夜を迎える。

・会場到着
 人、人、人。入場を待つ列が何百人と連なる。しかも雨が降るかもなどという予想はどこへやら思いっきり快晴である。暑くなりそうだ。レジャーゾーンに場所を確保しまずはビールで乾杯(あ、今回は連れが何人かおりました)。
 会場はスタンディングゾーン、レジャーゾーン、キャンプゾーンと3つに別れており、キャンプゾーンでは前の日から会場入りした人達がテントを張っている。既に寝転がっている人もいる。各自準備は万端のようだ。まずはともあれスタンディング席へ。ここも凄い人。既に30℃を越えた気温と相俟ってものすごい熱気だ。誰もがスタートの瞬間を今や遅しと待ち構えている。

電気グルーヴ
 2人になった電気グルーヴRSRFESは幕を開けた。ピエール瀧は7月のwire99の時と同じケンタウロスのかぶりもので登場、会場を沸かす。「あすなろサンシャイン」〜「スペースインベーダー」〜「Flashback Disco」〜「虹」とセットは進むが、会場のノリは大爆発とはいかない。みんなまだ様子見なのか、今フェス唯一のテクノユニットということでややすれ違いがあったのかもしれない。僕自信は凄くカッコよかったと思うが、少し残念。

NUMBER GIRL
 博多の爆裂のび太くん、向井秀徳率いるナンバーガールの登場。ローディーの音合わせがずいぶん長いなぁと思っていたら本人達だった。あらら。
 ギターはコードが何なのか分からんほどに歪みまくっているし、ボーカルも何を言ってるのかさっぱり解読不能。MCも意味不明で、ただのヨッパライ、危ない奴だった。しかしその爆音は限りなく透明にピュアに青空に溶けていった。迫力のニューカマー。

THE MAD CAPSULE MARKETS
 最後まで話題だったシークレットはマッドカプセルマーケッツ。翌日にも札幌でイベント出演があるので予想は立ったが。しっかしでっけぇ音だった。盛り上がりも最高。日本が誇る超弩級ヘビー・デジロック。俺達が元祖なんだというプライドが全編に溢れていた。「システマティック」に始まり最新シングル「PULSE」まで新旧織り交ぜての構成もよかった。ここまででベストアクト。OK!

・暑いしちょっと疲れたので後ろに下がる。ごめんねゼペット。グッズ売り場にいくが行列。並んでると前の2人組が話し掛けてきたので談笑。こういう触れ合いもフェスの魅力。Tシャツが売り切れていたのが残念だったがパンフを購入。ゼペットはスピーカーから聞いてるだけだったが最近のシングルのようなメロディアスなものだけでなくハードな曲もやっていた。

THE HIGH-LOWS
 思いっきりステージど真ん前の狂乱ポイントに来てしまった。いいのか俺。先は長いぞ。ピストルズジョン・ライドンばりに髪をツンツンに立てたヒロトが現れた途端会場のボルテージは最高潮に。下がることなく一気に突っ走った。
 「罪と罰」「ハスキー」「ガタガタゴー」「スーパーソニックジェットボーイ」「相談天国」「ミサイルマン」(もっとやったと思うけど)とにかく観客は爆発。跳ねる、叫ぶ、暑い。最高に盛り上がった。ロックンロールの強度だけを抽出したかのようなそのステージは若手にも見習って欲しいなぁ。個人的には始めてヒロトのちんぽが見れたので良かった。

Dragon Ash
 個人的に今回の目玉の一つであるドラゴンアッシュ。初めて見る彼らのステージに期待は膨らむ。メンバー登場。降谷建志は生で見てもカッコ良かった。
 最新アルバムからの曲を中心に、前半はHIP HOP系の曲で攻める。レゲェ調の小品を挟んで怒涛のパンク編へ。「Drugs Don't Kill Teens」「Fool Around」と来て「Mustang A Go Go」へ!盛り上がる盛り上がる。観客の反応もいい。
 再び降谷がマイクを持つと「Viva La Revolution」!観客全員で拳を突き上げ「Revolution」コール。何だか安っぽいアジテーションみたいだがそうせずにはいられなかったのだ。少なくとも今この場所だけででも、ほんの一瞬でも「革命」は起こった。見ている僕等の中で。ステージからふと目を離すと既に夕焼け。この緩やかなビートと穏やかなメロディーと心を打つ言葉と、僕が涙を流すには十分だった。「少し誇らしげな顔の自分がいる/満面の笑みを浮かべている/君達がすぐ目の前に見える」 嬉しかった。

・(Twilight Brake)
 2時間弱の休憩タイム。水分補給と軽い食事。この後の中盤戦がメニュー的にピークと判断したので全力で休む。セットチェンジの合間にスクリーンにはフィッシュマンズの映像が流れた。今年1月に急逝した佐藤伸治の姿に涙腺が緩む。いいバンドだったな。UAのステージを待っているとアナウンスが入りひととき花火大会へ。歓声が上がる。これでこそ夏のフェスだ。

UA
 誰もがひれ伏す平成の歌姫、UA。今年のフジロックでメインステージを張った自信もあってか、登場から貫禄たっぷりである。しゃべるとお茶目な関西弁でそれもまた良し。ギターに花田裕之窪田晴男という贅沢極まりないメンバーをバックに据えてのステージ。旧曲もほとんどがアレンジを変え、レゲェ/ダブ系の緩やかなものになっていた。が、ステージ自体は決してだれたものではなく逆に一本筋が通った緊張感を持って聞くものを圧倒していた。さすが。クライマックスは「雲がちぎれる時」。フェスに来るとどうも涙もろくて、いかん。

椎名林檎
 さあ!さぁさぁ!目玉中の目玉椎名林檎姫の登場。今回はバイオリンの斎藤ネコと姫のピアノ弾き語りのみというシンプルな変則ステージだが、個人的には初ステージ。一体どんな演奏を聞かせてくれるのか。
 カーキ色のハーフコートで登場した林檎姫。髪が邪魔でよく顔が見えない。ピアノ上手いなぁ。何もエフェクトなしでアルバムと同じ、あの声が聞こえてくる。凄い。OP1曲やって「シドと白昼夢」「警告」「茜さす・・・帰路照らされど」最後は「歌舞伎町の女王」。観客は固唾を飲んで彼女の指先の動き一つ見逃すまいと集中している。素晴らしかったと思う。が、しかし.正直言って短い。殆どMCもなし、たった20分強のステージだった。今回は変則なので仕方が無いのか、にしても残念。演奏自体は聞き惚れるほど良かっただけに。何かその気にさせといておあずけよん、てな感じでもう、姫ったら。今度はちゃんとバンドで来てね。

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
 去年のフジロックは中断中断でまともに聞けなかっただけに、今回はどうか。登場からしてもう日本のロックの頂点に立つ貫禄十分である。触れれば切れそうな目つきがサングラスの向こうからビシビシ突き刺さる。観客のテンションも上がりっぱなしである。
 一体何曲やったのか分からないが、もうとにかくハイスピード、アップテンポのみ。観客と自分らとどっちが先にくたばるか我慢くらべでもしているのか、限られた時間の中で何曲できるか記録に挑戦なのか、ひたすら走る、とばす、スゲェや。こいつらのステージはもう数回見てるが見るたびに凄くなる。一体どこまで行くんだろう。圧倒的にベストアクトだった。観客のボルテージもここがピークだったような気がする。ミッシェルの勝ち。

PRE-SCHOOL
 ブランキーまで一気に行くつもりだったが既に足がパンパン。腰がついていかない。年のせいか。そうなのか。悔しいが下がる。プリスクールは座ってスクリーンで観戦。2ndを中心に最新シングル「depends」も含めての構成。良かったと思う。ただ前のミッシェルの残像がだれしもに残っていただろうからその点は気の毒だったかな。しかし、十分に意地は見た。

BLANKEY JET CITY
 休息十分、ブランキーである。何度見てもカッコイイ。たまらんすわ。今回は現在ソロワーク中の3人とあって本人達も楽しんでやっているようだった。もうすぐ10年になろうかというそのキャリアからまんべんなく選ばれたセットは興奮の一語。結構長く、40分以上やってくれたのではないだろうか。などと冷静に書いてるが見てる時は完っ全にネジ飛んでました。休んだおかげでもうジャンプしまくり叫びまくり。達也のドラムは絶対に生で見るべき。死ぬぜ。

・(Midnight Brake)
 怒涛の中盤戦が終わり、約1時間の休憩。会場は寝ている人も増えて来て、サバイバルレースの様相を呈してきた。一緒に来た連れも寝はじめたが、僕のフェスはまだ終わらない。とにかく、一心不乱に休む。

・GUITAR WOLF
 去年のフジロックで見逃したギターウルフ。客が少な目だったこともあってメチャ近いところで見れた。ペニーレーンで見ているようだ。
 とにかく一瞬たりとも休まず疾走するR&R。ポーズもいちいち決まってなんというか、ださカッコイイというか、笑わせてもらった。楽しいし、これは盛り上がる。最後は観客の1人をステージにあげギター持たせて弾かせるパフォーマンス。セットに登って飛び降りたりもうやりたい放題。最高!

SUPERCAR
 再び目玉のスーパーカー。このバンドに対する期待はもう限りなくデカイ。今回は東京でのライブの合間というハードスケジュールもあってセット自体は短め。前半『JUMP UP』からの曲を中心に、後半はデビュー作を中心にという構成。意外と(失礼)演奏はしっかりしていて、特にナカコーとジュンジの2人のギターのコンビネーションはなかなか。コーダイのドラムもいい。ミキちゃんは・・・可愛かった(笑)。「クリームソーダ」のイントロは何にも増して清々しく、本当なら青空の下で聞きたかった。

・BLOODTHISTY BUTCHERS
 後ろに下がる。東の空はうっすらと明るくなりはじめた。正直言ってもう体力的に限界。気力でもたせていたがそれも尽きた。ブッチャーズは座って聞いていたが気がついたら眠りに落ちていた。夜は確かに涼しいが寒いというほどではなく、上に1枚羽織れば十分という程度だった。

サニーデイサービス
 ちょうどサニーデイが始まるところで起こされた。既に日は昇っており、朝の空気があたりを覆う。客のテンションも何がなんでも盛り上がる!というものではなく最後の余韻をきっちり楽しもうという穏やかなものに変わっていた。バンドもそれを察知してか煽るようなことはしない。元々そんなバンドでもないが、攻撃的ではなく、あくまで観客をつつみ込むかのような優しさに満ちた演奏だった。疲れた体に心地良く響く。ラストがサニーデイと聞いた時に絶対にやるだろう、いややって欲しいと思った曲があった。「サマーソルジャー」.イントロが始まって曽我部恵一が歌い出した時にもう僕は泣いていた。ありがとう。という言葉が誰に対してではなく、頭の中に浮かんでいた。ありがとう。

・総括
 とにかく、ロックフェスティバルがオールナイトで行われること自体が初めてのことだし、やる側も見る側も一体どうなるのかという感じだったろう。終わってみれば成功だったとはいえると思うが、途中倒れた人(運ばれている姿は何度か見た)の数、あるいは会場、特にスタンディング席でのゴミの量は無視できるものではなかったと思う。去年のフジロックで感じた観客のモラルは残念ながら今回そこまで行ってはいなかったようだ。ただ、今回はヒートアップしすぎて演奏が中断になるようなことは1度たりと無かったし、無秩序に騒ぐというのでなく、各自がそれぞれのフェスの楽しみ方をしていたとは、思う。こういうモラルというのは参加者が何度もこういう会場に来て、フェスとはどういうものかを各自で定義し、学習していくことでしか身につかないと思う。偉そうなことを言っても僕だってまだまだ初心者だ。その経験の積み重ねでしかフェスの、そしてそのフェスを生み出すシーン全体の成熟には至らないのだ。そういう意識をもっと各参加者が持ってくれたら、もっともっと楽しい、素晴らしいフェスになると信じている。来年このイベントがあるのかはまだ分からない。でも無くして欲しくない。会場で見た朝日の美しさは、僕の拙い文章力ではとても表現できるものじゃなかったからだ。同じことの繰り返しになるが、主催者、セキュリティのみんな、出演アーティスト、会場のみんなに、ありがとうを。