無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

Battle of Los Angeles

Battle of Los Angeles

 すごすぎる。とにかくこの怒涛の音塊をどう表現すれば良いのだろう。間違いなく1999年のNo.1ロックアルバムであるし1999年現在のロックが到達した極点であると断言できる。そのくらいの強度がある作品だ。本当にすごい。このアルバムにある音の全てがボーカル、ギター、ベース、ドラムの4つの楽器でのみ演奏されているのである。一聴すればそのすさまじさに気づくはずだ。サウンドの破壊力は世の中に溢れるえせへなちょこロックとは川相のバントとソーサのホームランほどの差があるし、そのグルーブは驚くほどしなやかで決して単調なマッチョイズムに陥ってはいない。拍手である。
 反政治的な歌詞や様々な政治活動にかかわる各メンバーのアティテュードを持ち出すまでもなく彼らほど「反抗的」というプリミティブな意味でロックなバンドもいない。僕は彼らの政治的信念には別に関心はない。そこから生まれてくる音楽にただただ圧倒されるばかりである。そしてロックという表現の意味と未来を少しだけ考えてしまうのである。ロックというものの定義が曖昧になり、ロックもポップもダンスもテクノもヒップホップも同じスタートラインに立つこの時代にあって彼らの音楽が明らかにロックであるというのは快挙である。ある意味でロックの勝利と言っていいと思う。反抗、怒りという最も単純な衝動からここまで表現の高みに到達できることを証明し、いまだロックの可能性が失われていない事を示したという点で今後も語られていくアルバムであるのは間違いないだろう。ロックは死んだ?笑わせるな。ここにレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンがいるじゃないか。