無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

センチメントの季節

センチメントの季節 (6) (Big spirits comics special)

センチメントの季節 (6) (Big spirits comics special)

 よくよく思い返すと僕は高校生活に甘酸っぱい思い出のようなものが一切ない。中学生の時には人並みに恋愛(ごっこ)らしきものをしたのだが、高校3年間というのは全くなかった。学校に男子生徒の方が多かったというのもあるけども、なんだか部屋に閉じこもって音楽ばかり聞いてたような気がする。今思えばもったいないことをしたものだと思う。まあ、10年たってその反動が来てるとも言えるのだけど(苦笑)。
 榎本ナリコの『センチメントの季節』。ここにいる少年少女たちには何もない。信じられるものも、自分の未来も、みんな不確かで曖昧で分からないものばかりだ。そんな不安定な時期の不安を消し去るように少年と少女は体を重ねる。快楽と後悔。欲望と虚無。そんなものに振りまわされる彼らの姿は痛すぎる。僕が手に入れてもいなかったものを彼らは失っていく。その姿は、痛すぎる。年齢的にも僕はこの作品の中で描かれる大人のほうに感情移入してしまうのだけど、彼らもまた痛い。いくつになっても思春期というのは僕らを苦しめる。そこから逃れる術を、まだ僕は知らない。
 現在6巻まで出ているこの作品だが、5、6巻ではストーリー仕立ての1冊1話形式となっている。今のところ、このやり方はこの作品には合っていない、というか作者が消化しきれていないように思う。以前の1話完結式の時の方が遥かに密度が濃かったと思う。正直、今の形は冗長で、間がありすぎるように感じる。もともと絵や台詞の隙間を読者が埋めていくタイプの作品だとは思うのだけども、その点は、今後に期待。山本直樹なんかを好きな人には物足りないかもしれないけど、これはエロ漫画ではないから。