無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

走れMUSE。

ORIGIN OF SYMMETRY

ORIGIN OF SYMMETRY

 UK期待の新人としてデビュー作を絶賛された後のセカンド。そして発売前から「大丈夫かこいつ?」「なんか勘違いしてないか?」というほど大風呂敷を広げ、他人には理解不能な独自の哲学に没頭し続ける数々の発言。こうした状況を見るにつけ、正直嫌な予感がしていた。クーラ・シェイカーの2枚目が出る前の状況に似ていたからだ。個人的にはクーラ・シェイカーは大好きなバンドであったが、彼らのその後を思い返すとこのミューズの新作に過剰な期待をかけるのは禁物と考えていた。しかし、そんな懸念はいい意味で完全に裏切られた。清々しいほど振り切れた音によって。
 "New Born"の緊張感溢れるイントロからいきなりどしゃめしゃなギターリフによって曲が牽引されていくドライヴ感。"Space Dementia"の流麗かつやり過ぎなピアノ。"Hypermusic"、"Plug In Baby"、"Citizen Erased"の流れなど鼻血が出そうだ。後半のやや抑え目な楽曲も美しくもどこか不穏な空気を持っており、なんとも腰の落ち着くヒマのないアルバム。これだけ整合感というものを無視して突き抜けまくった作品というのも珍しい。とりあえず思ったことを全てぶち込んで、ミューズというバンドの可能性をとことん突き詰めたアルバムとも言えるかも。本人達にも最後までどんなものができるのか分かっていなかったのではないだろうか。こういう無鉄砲な若手とジョン・レッキーのようなベテランプロデューサーというのは確かにいい組み合わせかもしれないとも思う。
 音楽的にも思想的にも、あまりにぶっちゃけた過剰ぶりを「誇大妄想狂」と自ら笑い飛ばす客観性がある限り、どんどんつっ走って行ってほしい。UKなどというちっぽけな枠は自然と彼らの前から消えてなくなるだろう。