無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

偉大なり歌謡曲。

満ち汐のロマンス

満ち汐のロマンス

 なんてたおやかで豊かな音楽なんだろう。今年に入ってから聞いたアルバムでも間違いなく3本の指に入るくらいのインパクトと中毒性を持ったアルバムだ。
 ジャズ、ブルース、戦後歌謡なんていう形容もされる。確かに、笠置シヅ子がロカビリー歌ってるような曲もある。そのボーカルの力と作曲能力、アレンジセンスは間違いなく本物だ。で、その様々に形容される音楽の要素は、平たく言ってしまえば歌謡曲というところに集約されるんじゃないだろうか。ロックだろうが演歌だろうが、何を聞いてる人でも日本人ならその血の中に必ず流れている音楽。古今東西あらゆる音楽を雑多に取りこんで日本という土地で独自に育まれてきた偉大な音楽、歌謡曲。このエゴラッピンというユニットはその最新進化形である、と僕はもう勝手に言い切ってしまいたい。例えば「ミュージックステーション」、「カウントダウンTV」、あるいは「ポップジャム」、そこから「ミュージックフェア」、はては「ふたりのビッグショー」まで、どこにいても不思議でなく、それでいてひとかけらの違和感を感じさせる音楽、とでも言おうか。
 ひとつの音符、バックの一音一音からにじみ出る濃厚なエロス。時に色鮮やかに、時にモノトーンで浮かび上がる鮮烈な情景。一度耳にしたら離れられない。もう浸り切るしかない。