無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

二人の天才の執念。

A.I. [DVD]

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 キューブリックの遺稿をスピルバーグが引き継いだというこの夏の超話題作。撮影から宣伝まで、キューブリックに敬意を表してスピルバーグにしては珍しく完璧な秘密主義を貫いたようだが、出来あがった作品はまぎれもなくスピルバーグのものだった。
 「ロボットは人間になれるか?」「限りなく人間に近いロボットを人間は愛せるか?」というのがテーマだが、要するにピノキオということだ。キューブリックがこういう題材を選んだというのは意外な気もするが、スピルバーグに早い段階からコンタクトを取っていたという事実もあり、大衆的なファンタジーを作ってみたいという希望もあったのかもしれない。なかなか興味深い二人の関係ではある。
 有限の命しかない人間と、壊れない限り生き続けるロボット。「好きな人とずっと一緒にいたい、愛されたい」という願いをかなえるための時間を超えたロードムービーという見方もできるかもしれない。『E.T.』のように映画史に残る名シーンがあるわけではない、けれども最初と最後が静かなトーンでまとめられて、それが逆に印象に残る。美しい余韻が残る。途中ややダレ気味の展開もあるが、スピルバーグの演出はやっぱり上手いと思う。ラストも当然の如く泣かせるものなわけだが、鼻につくヒューマニズムは抑えられて、胸がしめつけられるような物悲しい「ハッピーエンド」になっている。個人的にはすごくいいと思う。