無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ハイロウズ、最新の奇跡。

十四才/フルコート

十四才/フルコート

 ロックンロールにおいて初期衝動というものは演る方にとっても聞く方にとっても非常に重要なものだ。そしてそれは多くの場合若さと表裏一体である。初めてロックに触れた時の金槌で殴られたような衝撃。初めてバンドで音を出した時の雷に打たれたようなショック。悲しいかなそれは時と共に色褪せ、いつしか失われてしまう。それはある意味で当然なことで、いつまでも金槌で殴られたり雷に打たれていたら体がもたないのだ。
 ハイロウズは結成以来その初期衝動を純粋抽出し、可能な限り普遍的な表現として維持し続けようとしてきたバンドだ。そのために彼らが何をして来たかというと、年齢と共に手に入れる物分かりの良さ、諦めの早さというものを意図的にその音楽から排除して来た。結果、ぶっちゃけた話彼らの音楽はバカになったのだ。でも決して頭は悪くない。というかむしろ良い。それはヒロトマーシーも)という人がすごく頭のいいミュージシャンだからだ。バカなままピュアな衝動をロックンロールとして鳴らし続けるハイロウズはその道程自体が奇跡といっていいバンドなのだ。
 そのハイロウズが産み出した最新型の奇跡。青臭いがしかし、決して若いバンドには歌えない感動のフレーズがここにある。「あの日のレコードプレーヤー」であり続けること。その姿は、悲しいほどに美しい。