無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

世界を繋ぐ。

Rings Around the World

Rings Around the World

 スーパー・ファーリー・アニマルズについてはアルバム通して聞いたのは初めてだったりするのであまり細かいことは言えないのだけど、このアルバムは素直に感動した。ここに至る経緯は知らないけど、この美しさ、この感動は例えばヴァーヴの『アーバン・ヒムズ』、フレイミング・リップスの『ザ・ソフト・ブレティン』を聞いた時のそれに近い。もっと言えば『ペット・サウンズ』だ。この美しさはかなりの中毒性をもっている。
 ストリングスが多用されていてかなりシンフォニックな音だけれども、その中に巧妙にエレクトロニクスが入っていて、すごくオーガニックな感じ。ある意味機械を使ったポップサウンドの理想と言えるかもしれない。それくらい完成度の高い世界。歌われているのは、かなり政治的なメッセージ色の強いものだったり、世界の終末感だったりする。かなりシリアスではあるのだけど、サウンドは気持ち良いし、根底にユーモアを忘れていないので、あまり悲観的な感じはしない。
 ポップな小品が並ぶ前半からインストを挟み怒涛の後半へ。「ノー・シンパシー」から一気にヘヴィーになだれ込み、先行シングル「ジャクスタポーズド・ウィズ・ユー」からの3曲は涙なしでは聞けない。開放と閉塞。愛情と憎悪。終末と再生。引き裂かれた世界の現実がどっしりとしたサウンドと浮遊感のあるメロディーに乗って歌われる。文句なしのクライマックス。今年聞いたアルバムの中でも屈指の体験だった。名盤だと思います。