無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

楽園に行こう。

Since I Left You

Since I Left You

 優れたポップミュージックというものは、その音楽の鳴っている3分間なり4分間の間、聞き手をどこか別の空間へと連れて行ってくれるものだと思う。外国の街角かも知れないし、電車で駅二つの隣町かもしれない。自分の部屋かもしれないし、あの娘の家かもしれない。じゃあ、このオーストラリア出身、アヴァランチーズのアルバムが僕達をどこに連れて行ってくれるのかと言うと、天国に一番近い島。というか、もうそのものズバリ天国。それくらい気持ちいい。しかも3 分や4分じゃない。60分、曲間なしの至福の体験なのだ。900ものサンプリングを駆使して作られたという万華鏡のような眩いばかりの美しい音世界。流麗なストリングス、絶妙なアクセントを加えるフルート、ややダウナーなビートに乗る美しすぎるメロディー…。個人的にかなりツボな音。全編これセンスの塊のようなアルバム。ビースティーボーイズ・ミーツ・ビーチボーイズという形容もあながち大外れではないと思う。
 しかし、こんな美しい音楽を作ってしまう人間というのは絶対どこか屈折してたり欠落しているのではないかと思う。話によると彼らのライブはかなりパンキッシュで激しいものなのだそうだ。このアルバムからは正直想像できない。バンドの写真を見てもこの美しい音とは似ても似つかないムサ苦しい佇まいだ。一体どんなバンドなのだろう。と思ったところに初来日決定。…い、行きたい!