無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

猿、帰還せり。

point of view point

point of view point

 いよいよ再始動したコーネリアス、4年ぶりの新曲。しかし、「POINT OF VIEW POINT」はそんな過剰な期待を見事にスカしてくれる「まだまだ小手調べ」的なシングルだった。規則的なアコースティックギターのカッティングに様々なリズムとサンプリングされたボーカルが絡んでいく。正直、さほど衝撃を受ける音ではない。けれども、確実に今のシーンにない部分を突いていると思った。
 サウンドのクォリティ的には申し分なく、この透明感溢れる美しい音風景は懐かしさと新しさ、両方を感じさせてくれる。メロディー重視の歌モノというよりはもっと音響的で実験的な方向を向いているのかという印象を受けた。そしてそれを受けてリリースされるのが来たるべきアルバムへの本当の意味での先行シングルと言える「DROP」である。
 アコースティックギターにリズムが絡む点では先の「POINT OF〜」と同じだが、さらに澄みわたった透明感、ボーカルのハーモニーの気持ちよさが圧倒的だ。ひとつずつ音が重なり合ってびたびたとタイミングが決りつつクライマックスに向かって盛り上がっていく様は素晴らしい昂揚感を感じさせてくれる。ボーカルは楽器として曲を構成する一要素に過ぎない。しかしその威力を最大限に発揮した曲と言えるのじゃないだろうか。空気のように水のように、何の違和感も不自然さもなくそこに存在している音楽。体中に音が沁み込んで血液のようにすみずみまで流れていく、そしてなんだか体が綺麗になっていく、そんな気がする音楽。
 この2曲を聞く限り、とてつもなく音楽的でとんでもなく愛に溢れたアルバムが後に控えているのだろうと思う。そしてその先、その音楽をひとつの空間で共有するシーンが見られるのだろう。日本だけではなく、世界中で。なんだか落ち着かなくて、外を散歩して来たい気分だ。