無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

過去と未来を繋ぐ音。

テルミン ディレクターズ・エディション [DVD]

テルミン ディレクターズ・エディション [DVD]

 世界初の電子楽器と言われるテルミンを発明したレフ・セルゲイヴィッチ・テルミン(英語表記ではレオン・テルミン)博士の数奇で波瀾に満ちた生涯を、テルミンにまつわる様々な人々の証言を元に追いかけるドキュメンタリー映画。テルミン博士は1920年代から30年代にかけてニューヨークでテルミンの演奏活動を行っていたが、1938年にソ連政府により拉致され、強制収容所送りになったりスパイ活動させられたりし、1991年にようやくニューヨークに戻ることが出来た。そして1993年、この映画が公開された翌日に97歳でこの世を去った。書いてるだけでもすごい人生を送った人だ。
 ドキュメンタリーの中心はテルミン博士の愛弟子で、テルミン奏者のクララ・ロックモア(1998年没)と、モーグシンセサイザーの発明者で、現在もテルミンを製造・販売しているロバート・モーグ氏の二人。クララの演奏シーンは素晴らしく緊張感があり、同時にテルミンという楽器そのものへの、そしてテルミン博士への愛情をつぶさに感じることが出来る。ラスト、50年の時を経て二人が再会するシーンは感動的だ。ひとつの楽器と、その発明者を巡る数奇な運命。時を隔てて鳴り続ける未来の音色。どんなジャンルであれ、音楽というものに興味のある人なら絶対に見て損はない映画だと思います。
 個人的に楽しかったのは「グッド・バイブレーション」でテルミンを使用したブライアン・ウィルソンが語り倒すシーン。絶対なんかやってるとしか思えない超ハイテンションで意味不明にしゃべりまくる。すごくドラッギーに浮きまくっていた。
 映画に関する小冊子と、楽器のテルミンについての小冊子(竹内正実氏監修)、そしてなんとテルミンの回路図(笑)の3点セットの豪華プログラムはマスト購入アイテムです。作っちゃおうか?テルミン