無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

君と僕のSとM。

Sugarless

Sugarless

 例えば、僕に今とてもとても好きな女の子がいて彼女も僕のことがとてもとても好きだとする。ハタから見れば腹立つくらい何も問題ない恋愛をしていても、きっと僕は心のどこかでこんな関係がずっと続くわけがない、あるいはもっと他にいい子がいるかもしれない、と思ってることだろう。それは僕が残酷で人でなしのひどい男だということではなく、人間ってきっとみんなそういうモンじゃないかということだ。スガシカオという人はそういう人間のいやらしく汚い部分、みんなわかっていながら目をそらしている部分をサディスティックに目の前にさらけ出す人だったが、このアルバムではそういう部分が今までよりわかりやすく出ているような気がする。きっとこの人は、恋愛じゃ人は本質的に幸せになんかなれないというところから逆算して曲を作っているようなところがあるんじゃないだろうか。そんな気がする。だって「砂糖抜き」だもの。苦いんだよ基本的に。
 デビュー時から最近までのシングルカップリング曲、「夜空のムコウ」のセルフカバーに新曲が加わった変則編集盤ではあるが、歌の世界はずっと一貫しているので知らない人が聞けばきっとオリジナルだと思うだろう。そして相変わらずだけど恐ろしくクォリティが高い。「ちょっと休むつもりで」作った編集盤でここまで自分を追い込んでしまうのも、表現者としてのこの人の業と言うべきものなのだろう。アーティストとしてはとことんストイックでマゾヒスティックな人なんだと思う。と言うわけでちゃんとした新作が聞きたいです。2年くらい休んじゃっていいから、じっくりお願いします。