無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

優等生は愛を知る。

First Heaven

First Heaven

 プリ・スクールというバンドはすごく知的であり、ハジケるにしても少なからず計算されているような印象が僕にはあって、そこがかわいいというか、憎めなくもあり鼻につく部分もありで、自分の中でも好きなんだけれどもイマイチ微妙な位置にいるバンドだった。
 この新作も基本的にはそういう印象なんだけど、むやみにやんちゃしてるというのではなくすごく統制されたアルバムだというのが率直な印象。で、同時にすごくエモーショナルだと思う。斜にかまえるのではなく、こちら側に手を差し伸べてくるような、こういう作品をプリ・スクールが作るというのはちょっと意外だった。
 歌詞の内容も寓話的ではあるけれどすごくストレートで分かりやすいものが多い。特に2、4、11、12曲目なんかは「ああ、もうそこまで言っちゃうんだ」というくらい。AIRとの共演もこれならよくわかる。エレクトロニクスの導入も無理な印象はなく、むしろこのエモーショナルな表現のためのツールとしての必然を感じさせる。ありきたりに言えばやはり『Futurama』以降のアルバムということなんだけど、彼ららしいキラキラしたポップ感のために、「美しい」というよりは「楽しい」という形容がぴったりくる。そして今までよりバンドとしての結束の強さのようなものを強く感じる。守るべきものが見つかったと言うか、腹をくくったと言うか。簡単に言うと、すごく愛のある感動的なアルバム。こういう音楽がもっとたくさんの人の耳に届くといいと思う。個人的には今までのプリのアルバムの中で一番好きです。