無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ウゴウゴくんはどこへ消えた。

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 とある掲示板で、このアルバムを「ウゴウゴルーガ」と評している人がいた。なかなか上手いことを言うものだと思った。けども、聞いていくうちに少し違うような気がしてきた。
 「ウゴウゴルーガ」というのはその昔渋谷系華やかなりし頃に大人気を博した子供番組だ。しかし、その内容は子供向けを装っておきながら作り手自身が子供を隠れ蓑に好き勝手クリエイティブに暴れまわるという凄まじいものだった。小山田圭吾自身もゲストで登場したこともあったと思う。で、音も言葉も必要最小限のエレメントのみで構成されたこのアルバムは確かに、言うなれば子供のような視点で描かれたものだと思う。しかしこの作品からは「ウゴウゴ〜」のように大人の作為や悪意というものがほとんど感じられない。すごく素直でストレートだと思う。かと言ってこども言葉で「…でちゅよ〜」なんてやってるのとも違う。それはダサいという冷静な視点はちゃんとある。すごくクレバーにピュアなアルバムだと思う。彼自身に子供ができたことを安易にこの作品の中身と結びつけるのは早計だと思うけど、決して無関係ではないんだと思う。シングルが出た時に「とてつもなく音楽的でとんでもなく愛に溢れたアルバム」と書いた通りのアルバムだと思う。繰り返しになるけど、聞いていて体が綺麗になっていくような瑞々しい音楽だと思う。
 歌モノのメロディーがないことを物足りなく思う向きもあるようだけど、例えば「DROP」でコーラスが重なり合っていくハーモニーとか、コード感とかものすごく豊潤で、今の僕にはこれだけで充分。
 さて、小沢君は元気でやっているのかな。