無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ベンジーしかいない。

VIETNAM 1964

VIETNAM 1964

 シャーベッツに対しては距離を取ったスタンスでいた僕だが、このアルバムと10/28の日比谷野音ライブで一気にその評価が変わってしまった。少なくともこのアルバムでシャーベッツは初めてバンドとしてちゃんと機能したと言えるんじゃないだろうか。
 かと言って、ベンジーが1人突出しているということに変わりはない。ベンジーに対抗できるだけの個性と能力が他のメンバーにはないのだからしょうがない。しょうがないと言うか、逆にそれこそがシャーベッツの最大の魅力であり強みであると開き直ったかのようだ。マキシ三連発を聞き返しても思うけど、スピード感溢れるロックンロールチューンにしてもミドル〜スローナンバーにしてもソングライティングに関しては全く問題なく素晴らしい。ベンジーのギターもボーカルも、バンドの演奏も、多少ズレても音が外れてもカッコよけりゃOK、という非常に分かりやすい基準でプロデュースされていると思う。ザラついた粗い音で統一されたアルバムには今までと同じく一貫して冷たい緊張感が漂っている。僕はそれを疎外されるような、マイナスのイメージでとらえていたんだけど、ベンジーの描く冷静に狂った美しい世界にはこれくらいがふさわしいような気がしてきた。
 ベンジーの話しかしていないのにバンドとして機能したもクソもないと思うのだけど、シャーベッツに求められるのはそもそもベンジーの才能が最大に発揮できるということに尽きると思うので、その一点に集中したこのアルバムは現時点で彼らの最高傑作であると思う。