無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

本物の虚無。

COPY

COPY

 ぶっきらぼうに歌われる美しいメロディー、繊細でありながら歪んだギター、下半身のしっかりしたバンドアンサンブル。全く貧乏くさいところがない堂々とした佇まい。何でこんないいバンドが今まで無名に近かったのか理解に苦しむくらい素晴らしいアルバム。実際僕は買ってから毎日のように聞き狂っている。
 「自分は価値のないクソのような人間だ。」数年前まで多くの共感を呼んでいたそんな言葉はただの自己弁護のオナニーでしかない。そんなことは最初からわかっていて今さら言われるまでもない。シロップ16gはその矛先を自分だけではなく他人、というか生という概念そのものに向ける。そしてその切り口には圧倒的に迷いが無い。「ボクもアンタも生きてていいのか」ぶっちゃけた話、そういうことだ。生きてる価値もないが、死ぬ理由もない。そんな後ろ向きな肯定でしか成り立たない僕らの毎日。ポジティブな物言いが主流を占めるようになった現在の日本のシーンにおいては異端というべき究極の引篭りロック。モザイク入りのAVみたいな空虚なものじゃなく、確かな質量のある言葉が説得力のある音でもってこれでもかと迫ってくる。
 最近出会ったニューカマーの中でも抜群に個人的なツボをズボズボ押してくるバンド。何年後になっても聞き返す大切なアルバムになるだろうが、この興奮を他の誰かと分かち合おうという気にはならない。なれない。ここにある言葉、音、雰囲気、生きる理由、死の価値。全部オレのモンだ。