無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

日常とクラブの間に。

LIFE GROUND MUSIC

LIFE GROUND MUSIC

 僕は前作の感想(id:magro:20010204#p2)の中で「幸福感に溢れて、まぶしいのはいいけれど、ストレート過ぎる」というようなことを書いた。前作も結構繰り返し聞いたし、悪いアルバムだとは全然思わないけど、サウンドの特徴であった上モノのキラキラ感がすごくフェイクっぽいというか、ウソっぽく聞こえることがあるのだった。それはそれで聞いていて盛り上がるのは確かなのだけど、要するにクラブで踊っている時の昂揚感だけで成り立っている音楽という感じで、あの音楽が鳴っている空間が僕の日常にはないなあ、と思ったのだ。そして今作。
 その、武器であったはずの上モノを極力拝し、ミニマルなビートとストイックなサウンド処理で全編硬派に聞かせるサウンドになっている。アッパーな昂揚感よりはむしろ内向きに集中していく緊張感で統一されていると言える。かといってダンスミュージックとしての機能性は全く失っていないし、小難しさや野暮ったさもない。ボーカルものとインストのバランスもいいし、民族音楽っぽいビートを使った曲もなかなか面白く、バリエーションも結構広い。
 僕はイビザなんか行ったことはないし、彼がそこで何を受け取ってこういう変化が起こったのかは全くわからない。それを聞いたところで残念ながらああそうですかとしか思えないだろう。でも、ここで鳴っている音楽はすごくリアルに僕の体に響く。パジャマを着て味噌汁をすすっている時でも全然OKな、タイトル通りの生活密着型クラブミュージックと呼びたい。