無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

クー!

不思議惑星キン・ザ・ザ [DVD]

不思議惑星キン・ザ・ザ [DVD]

 1986年に製作された旧ソ連の映画。
 建築技師マシコフは妻に買い物を頼まれ外出する。グルジア出身の学生に「自分のことを異星人だと言う男がいる」と声をかけられる。マシコフは男の言うことを信じず、男の持つ「空間転移装置」のスイッチを押してしまう。次の瞬間、マシコフと青年の2人は砂漠のど真ん中に立っていた。歩き疲れたところにふわふわと飛んでくる宇宙船。中から出てきたのは汚い格好をした2人の男。檻に入り、変な楽器を出して踊り出す。挨拶はほっぺを叩き、ガニ股で腕を広げて「クー」。そんな映画です。
 …わけわかんないでしょ?うん、わけわかんないんだよ。でもそんな映画なんだからしょうがない。コレがもう妙に味があると言うか何と言うか、脱力モノの笑いがこみ上げてくるんだよなあ。パッツ人という人種が鼻に鈴をつけなきゃいけないとか、マッチが異常に高価なものであるとか、いちいち設定も意味不明。ただ、かなり激しい人種差別があったり、警察が理不尽に摂取を行っていたりと、当時の共産国家ではかなり危なそうな描写もあるのだけど、ペレストロイカ勃興時のソ連ではこれでもOKだったようだ。意外と言えば意外。
 特撮の技術自体は高くないのかもしれないけど、今見てもそれほど変なところがないのもすごい(ていうか全体に変な映画なんだけど)。宇宙船や、小道具、衣装など、とにかく汚しまくっていて、徹底的に生活臭、泥臭さのようなものを出している。ものすごく突飛で奇妙な世界なんだけど、どことなくリアルに感じられるのはそのためか。音楽もそうだけど、どっかトボケていて、妙な間がおかしい映画。
 ソ連での公開時は中ヒットと言うくらいの映画だったようだけど、カルト的に人気を集め、現在も世界中に関連サイトが林立し、その人気は衰えるところを知らないそう。確かに日本でもそういう、サブカル的な人気を集めそうな作品だと思う。製作者がどういう意図で撮ったのかはわからないけれども、見たまんまこのアバンギャルドな世界を素直に楽しめばいいんじゃないかと思います。クー!