無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

THE WORLD IS NOT MINE。

THE WORLD IS MINE

THE WORLD IS MINE

 昨年何度かライヴを見た限り、『TEAM ROCK(id:magro:20010221#p1)』での外向きな開放感、幸福感は鳴りを潜め、『図鑑』の頃の内向きな実験性が前面に出ていたような気がした。そして、その『図鑑』時代の楽曲の方がストレートに音楽として鳴っていたように思うのだ。頭でっかちに考えることよりも、肉体的に直結した快感を求めて4つ打ちなど導入したのだと思っていたが、結局、そのビートを深く深く追求することになってしまうという、極めてロック的な業を持つアーティストなのだろう、岸田繁という人は。
 はっきり言っていいアルバムだと思う。前作より長く聞けそうな気がする。音楽的にもすごく変化があって面白いアルバムだと思うし、前作ほどではないにしてもポップな部分もある。ここまで自由に音楽に向えるバンドがいくつあるのかとも思う。ただ、どうしても、聞いていて何か距離感のようなものを感じてしまう。各雑誌などで本作を絶賛している文章を読んでいてもそうだ。「ワールズエンド・スーパーノヴァ」、「ワールド・イズ・マイン」。その「ワールド」に僕は入っていないんじゃないだろうか。その「ワールド」って、すごく狭い、箱庭の研究室のようなものなんじゃないのだろうか。
 いくらエロ本を読みふけったところで、それだけじゃセックスが上手くなるわけはない。くるりに関しては、いつもこういうもどかしいイキきらなさをを感じてしまう。どこか冷静に、理性を捨てきらない感じと言うか。聞いていてハッとする瞬間がかなりあっただけに、本作に関してはすごく勿体無いという気がする。この納得の行かなさを上手く説明できない自分にもとてもイライラする。