無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ロックンロールエクスプロージョン。

Plastic Fang

Plastic Fang

 JSBXは、常にロックンロールへの愛情を感じさせつつも、ロックンロールを解体し、再構築させ、現代の、もしくはその先の表現として再生させてきたバンドだ。古き良きロックンロールへのリスペクトを持ちながら非常にロックンロールに対して批評的なスタンスで音楽を鳴らすバンドだったと言える。前作『アクメ』は、様々なプロデューサー、ミキサーに一旦完成した音を丸ごとあずけ、さらに再構築してもらうという、彼らの中でも最も実験的、進歩的な方法論で作られたアルバムだった。約3年ぶりに、各メンバーのソロプロジェクトなどを経て完成した新作は、実にストレートに真正面からロックンロールを鳴らした快作になった。
 1曲目"SWEET N SOUR"からいきなりピークを迎える。ザクザクと斧で叩ききるようなギターリフ、パワフルで正確なラッセル・シミンズのドラム、そして今まで聴いたことがないようなジョンの突き抜けたボーカル。リトル・リチャードのピアノ・パフォーマンスがそうだったように、エルビスの腰の動きがそうだったように、ジョン・レノンのシャウトがそうだったように、ミック・ジャガーのでかい口がそうだったように、このアルバムはロックンロールという音楽がこんなにも猥雑でエロティックで興奮するものだということをあらためて思い出させてくれる。
 そして、このアルバムが素晴らしいのは決して単なる過去への回帰という後ろ向きなものものではないからだ。あくまでも2002年のロックンロールとして鳴っている。それはこれまでのバンドの経験から、自分たちがストレートにロックンロールを演奏するだけで十分ロックンロールに対する現代的批評になり得るということをバンド自身がはっきり自覚したからだろう。「プラスチックの牙」なんてタイトルも、すごくクールかつクリティカルにロックンロールという音楽を捉えたものだと思う。こんな短い文章の中で10回もロックンロールって言ってるけど、そういうバンドであり、アルバムなんだから仕方がない。6月の来日が今から楽しみだ。