無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ウルフルズ is back。

ウルフルズ

ウルフルズ

 昨年のベスト盤の感想(id:magro:20010506#p1)の中で僕は「みっともなく、そして最高にカッコよくもがきながら前進するさまを見せてほしい」ということを書いた。それは、「明日があるさ」についてだけではなく、確実に自分たちの武器であったはずの魅力を、わざと外しているかのように見える彼らの方向性についての煮え切らない思いだった。その後のシングル群に続いてのこの新作は、その迷いを一気に振り切った久々の快作になった。その彼らの魅力とは要するに、泥臭さ、コテコテさ、暑苦しさ、真っ直ぐさ、わかりやすさ、不器用さ、といったものだ。彼らのイメージそのままの、楽しくて、情けなくて、カッコいいウルフルズがここにいる。トータス松本のボーカルも素晴らしいし、何よりも最近のアルバムに比べて圧倒的に曲が粒揃いだ。
 今回、大半の曲をプロデュースしているのは伊藤銀次氏。つまりは、「ガッツだぜ!」であり、「バンザイ」である。前述した彼らの迷いというのはつまるところこれらのヒット曲を超えなければいけないという過剰な意識と重圧がもたらしたものだったことは明白で、今ここに戻ってきたと言うことはようやくフラットな視点で自分たちの魅力、武器をもう一度確認できたと言うことなのだろう。安易な原点回帰と言われても仕方がないかもしれない。しかし、このアルバムは「最近パッとしないし、あの栄光を再び」というものでは決してない。ワン・アンド・オンリーの強さ。それを最初から持っていたことに彼らは気づいたのだ。アルバムにつけられたセルフタイトルは自分たちの音楽、楽曲に対する登録商標のようなものだ。