無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

廃棄物13号。

WXIII 機動警察パトレイバー [DVD]

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 だいぶ前から企画は聞いていたが、とうとう公開になったパトレイバーの劇場版3作目。TV版、コミック版、OVA版、そして劇場版と、それぞれのメディアによって同じ作品でもその世界観がかなり違うこのシリーズだが、今回の劇場版も押井守の過去2作が持っていたリアリティを維持していると言える。それはつまり特車2課が全くの脇役になってしまうということで、過去の劇場版以上に野明や遊馬の出番は少ない。クライマックスの戦闘シーン以外はほとんどないと言ってもいい。
 今回はコミック版の「廃棄物13号」編が元になってるとは言え、ストーリーはかなり変更が加えられていて、脚本を務めたとり・みきのSF感、怪獣モノに対するリスペクトなどが感じられるものになっている。演出は前述のようにリアリティを追及する方向だが、押井守作品のように監督自身の世界観を前面に押し出すというのではなく、アニメによる演出の追及というようなきめ細かいこだわりが随所に感じられる。
 ストーリーがとにかく重く、救いがないもので、見終わった後もカタルシスとか爽快感とは程遠く、ものすごく後味の悪いものだった。だからと言ってこの映画が悪いというんではなく、むしろいい映画だったと思う。あまり話題になってないみたいだけど、パトレイバーファンは見て損はないでしょう。