無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

赤い翼。

BIRD

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 ミッシェルの前作『RTBS』とそのツアーを見た人なら、ミッシェルが現在どれだけ重く大きな業の中でもがいているか直感としてわかると思う。最近のチバの多岐に渡る課外活動からも、何かを変えなければこの先はないかもという不安が無意識にでもあったのではないだろうか。その中で単純にチバがロックンロールをエンジョイするために風通しのいい新ユニットを組んだと考えるのは安直かもしれないが、そう思えるくらいこのアルバムは瑞々しい衝動でいっぱいだ(いきなり1曲目、ヘヴィーなリフで始まるけれども、そういう問題ではなく)。
 ミッシェルの中ではアベのギターが凄すぎて気付かなかったが、チバのギターがこれほどまでにバキバキと気持ちいいビートとリフを刻めるとは思っていなかった。照井のベースも、CARNEの時とは違って久々に疾走感のあるロックンロールの中で歌いまくっている。「シャロン」という新たな名曲まで手にしてしまったチバはこの先どこへ向かうのだろう。この青いスピードの中で何を手に入れたのだろう。
 詞のフレーズひとつひとつ取ってみても勘ぐればどこまででも勘ぐれてしまう新バンドであるし、アルバムであるのだけど、ここは素直にこのカッコいいロックンロールに浸ってしまうのが正解なのだと思う。そこを割り切れない人にはかなり複雑な気持ちになってしまうアルバムかもしれない。