無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

愛に満ちた高き意思。

HIGHVISION

HIGHVISION

 前作『Futuramaid:magro:20001201#p1)』の方向性をさらに追求したアルバム。と言っていいだろう。言葉はさらに断片的になり、歌詞は短くなっていき、タイトルはそのイメージだけで曲のど真ん中を射抜くストレートさを持ち、音の密度さえもが薄くなっていっている。必要なものだけを純粋抽出し、余計なものを削り取って削ぎ落として出来上がったアルバムだと思う。音の密度が薄くなった分、ひとつひとつの音や言葉に注ぎ込まれる意味や、集中力は以前とは比較にならないほど大きくなっている。無駄なものがない。そしてその音と音の、言葉と言葉の隙間を補完し、完成させるのは聞き手の意思に他ならない。そのキーワードとしての「HIGHVISION」なのだと思う。
 感触としてはコーネリアスの『POINT(id:magro:20011031#p2)』や、ポラリスなどに近いものも感じる。とても暖かく、愛に満ち、眩しく、凛とした音楽。そう、これはすごく音楽的なアルバムであり、スーパーカーというバンドはそういうバンドなのだなあ、と改めて思った。益子樹による音響的なサウンド処理が、この温かさ、柔らかさの大きな一助になっていると思う。とてつもなく愛に満ちた、究極のコミュニケーションミュージック。