無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ナンバガは修行する。

NUM-HEAVYMETALLIC

NUM-HEAVYMETALLIC

 こういう音が欲しい、こういう音楽を創りたい、という明確なビジョンが頭の中にあり、それを具現化するために自らのスキルとセンスを確実に磨いていく。その意志の強さにおいて、今ナンバガはバンドとして一体となったすさまじいエネルギーを放っていると思う。向井秀徳は「鍛錬(=discipline)」という言葉を使っているが、本作を通して感じられるハードな緊張感や、かなり緻密に練られたアレンジ、各楽器のフリーなハジけ方など、クリムゾンにも通じる部分もあるかも、なんて思った。田淵ひさ子のギターが印象的なフレーズとリフをグイグイ弾きまくってる。エレキギターってこんなに金属的な音が出るんだなあ、とあらためて感心。なるほど「HEAVYMETALLIC」なわけだ。この辺のサウンド面での進歩は恐らくはデイブ・フリッドマンの力によるところも大きいのだろう。前作の時も驚いたが、今回はそれ以上だ。彼らのニューウェーブからの影響がより顕著に見えるという意味でも面白い音になっていると思う。
 歌詞の方はやはり何を言っているのかよく理解できないのだけど、とにかく向井秀徳が苛立っていることだけははっきりとわかる。今までより自覚的に語られる、念仏とも悟りとも言えない不思議な言葉の羅列のアジテーションナンバガに対しては以前からよく「酩酊」という形容が使われていたが、今作に関してはそんなものではない。もっと冷静に、シラフで気が狂ってしまってる。そんな感じだ。
 彼らのビジョンが明確になったという意味で、今までのアルバムの中では一番すんなり耳に入ってくるんじゃないかと思う。ギターとドラム聞いてるだけで全然飽きない。