無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

スカパラ、10年の結実。

 スカパラというバンドは、冷牟田竜之を中心として、優れた現状認識力、自己分析力を発揮して自分たちの行く末をきっちりと考え、具現化しているように思う。シーンから少し距離を取っているように見えていても、ちゃんと頭の中では次の戦略を考えていたのだろう。
 田島貴男チバユウスケ奥田民生をボーカルに迎えたシングル3部作にしても、自分たちの音楽に自信がなければこういう試みはできないだろうし、また、きっちりセールスとしても結果を出した。当然、これでスカパラに興味を持った人もいると思うけど、そういう人がこのアルバムを聞いてもシングル3つ以外つまらないと思うかというと、全然そんなものになっていないのが今のスカパラのいい状態を表していると思う。3曲全ての作詞を担当した谷中敦の詞の世界も、ドンピシャ今の彼らの方向に合っている。
 彼らのようにインスト中心のバンドというのはどうしても曲の構成やメロディーのバリエーションに制限が出てきてしまうので、アルバムを重ねるごとにテンションが落ちていってしまうケースが多い。しかし彼らはスカを中心に様々な音楽を貪欲に取り込み、自らの血肉としてグルーヴを強化してきた。茂木欣一が正式メンバーとなったことで、リズムの幹が決定的に安定したのも強い。改めてロックンロールなバンドだと実感できるグルーヴィーなサウンドが全編に漲っている。
 ギムラ、青木達之の死、杉村ルイの脱退など、様々な紆余曲折を経て10年間をサバイバルしてきたバンドがここに来てオリコン1位の座を奪取してしまう。なんてタフなバンドだろう。そして、なんて出来過ぎな、感動的な筋書きだろうと思う。カッコよくて、楽しくて、強くて、少し切なくて、そして勇気が出てくるアルバム。