無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

Oasis Strikes Back!

Heathen Chemistry

Heathen Chemistry

 今洋楽を聞いている20代中ば〜30くらいの人たちの中で、オアシスこそがはじめて「僕(たち)のバンドだ!」と大きな声で言えるバンドだった、という人は少なくないんじゃないかと思う。僕も、ストーン・ローゼズを除けば、同世代でこれだけ無条件で信頼を寄せられるバンドなんて当時他にいなかったと言っていい。何でそこまでオアシスを信頼できたかというと、誰よりも彼ら自身がロックンロールを信頼していたからだ。そしてそれは驚くべきことに今に至るまで全く揺らいでいない。
 『ビィ・ヒア・ナウ』、『スタンディング〜』での混乱と迷走の時期を経て、オアシスは再び満タンの燃料タンクでもってアクセル全開で走り始めた。先行シングル「ヒンドゥ・タイムズ」で感じた予感はここに来てもはや疑いようのない確信に変わった。ボトムの低いゆったりとしたテンポに乗る、ファンキィなロックンロール。聞いた途端口づさめる圧倒的な浸透力を持つメロディ。高校生でも訳せそうなシンプルでシンボリックな言葉たち。ここにあるのはまぎれもなく「みんなのうた」であり、つまりはオアシスだ。リアムやアンディやゲムが曲を書いていても、このアルバムはオアシス以外の何者でもない。ここ数年で最も漲った、そしてバンドとして結成以来最強の布陣となったオアシス。「一体どこで間違ったんだ?」と弱気に呟くノエルはもうここにはいない。言うなれば、『MORNING GLORY』の後にこれが来るべきだった、というアルバムだと思う。あとは最高のコンディションで来日してくれれば言うことなし。
 これが彼らの最高傑作だとは口が裂けても言わないけど、これだけは言える。UKロックの低迷からの復活。それを決定付けるのは他でもない、結局オアシスだったってこと。ロックは死んでも、何度でも生き返る。さあ、ロックの逆襲が始まる。