無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

真夏の夜の夢。

Night Food

Night Food

 最近僕の周りでもエゴラッピンいいよねという人たちが結構増えてきている。で、意外とみんな彼らが2人組だということを知らなかったりする。もっと大人数のバンドだと思っているのだ。ビッグバンドジャズ風のアレンジも多いのでそう錯覚するのかもしれない。頭の中にはすでに完璧なサウンドスケープが出来上がっていて、どんなミュージシャンが参加してもそこから1ミリもずれることがない。様々なジャンルがゴッタ煮になっていながら音楽に漂う匂い、色合いがあまりにも一貫しているところに、職人ぽさすら感じたりもする。アルバムには様々なミュージシャンが参加していて、自由に演奏しているように見えるけれど、そのサウンドの取捨選択というのはかなりシビアに行われているような気がする。アレンジは細かいし。
 今現在、彼らの音楽はムード重視のおしゃれなアイテムとして消費されている部分がもしかしてあるのかもしれない。でも、僕は彼らの音楽はそんなおっしゃれーなモンじゃなく、もっとザラザラした、泥臭いものだと思う。何者にも媚びていないし、もっと言えばパンクの香りもする。しかしそれでも、例えばデートのBGMとしてでも使えてしまう懐の広さがあるのがすごい部分だと思う。彼らは歌詞やサウンドに何らかのメッセージを与えるタイプのバンドではない。時流や周囲に流されることもなく、自分たちの進むべき道を迷うこともないだろう。聞き手に取ってもそれは同じで、彼らの音楽に一旦はまってしまえば、自分の趣味が変わらないうちはずっと彼らの音楽はその人にとって素晴らしいものであり続けるということ。
 さらに艶っぽくなった音とボーカル。真夜中から明け方までを通り抜けるようなストーリー性に満ちたアルバムの流れ(「老いぼれ犬のセレナーデ」から「WHOLE WORLD HAPPY」に移る瞬間の高揚感は最高)。当たり前のようにまたしても傑作。