無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

BAZRAを喰らえ。

凡 to be Wild

凡 to be Wild

 フルアルバムとしては『アホォリズム』以来約1年半ぶりの2枚目。BAZRAの魅力は何と言ってもそのバンドアンサンブルに渦巻く黒々としたグルーヴだと思う。ファンク、ジャズ、そしてもちろんロックンロール、パンク。そのどれでもありどれでもない、和食の職人がフレンチを作ろうとしたらイタリアンになっちまったみたいな何者でもなさが個人的にすごく気持ちよい。
 先日(2/15)の札幌ワンマンライヴの時にも思ったのだけど、今作においてはこれまで以上に曲のバラエティがあってよい。しかも変に背伸びして曲調を変えたりしているのではなく、微妙なアレンジや楽器の音色などで思い切り幅が広がっている。勢い頼りではなく、個々の力量にきっちり根ざした成長の跡が垣間見られる。前作にあたるミニアルバム『腹グロッキー』では歌詞に内包される哲学的な価値観がやや自家中毒気味になっていてサウンドの爆発力を抑えがちになっていたが、ここでは上手くバランスが取れている。自己の中に潜って自問自答するような表現もあるが、そこでもしっかりと外界を見つめ、虎視眈々と武器を研いでいるのがわかる。とにかく、聞くものの意識の中に無理矢理でも入り込み、なんとか目を覚まさせてやろうとする暑苦しいまでの意思が感じられる。
 音楽に限らず、芸術表現においては自分のできることだけをやっていたのでは成長もないし進歩もない。自分の追い求める理想の具現化のために無茶してでも泥にまみれようとも前に進もうとする意思とエネルギーが必要だ。少なくともBAZRAにはそれがある。これからも追いかけていきたいと思う。