無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

氣志團が描き出す「あの風景」。

Boy's Color (CCCD)

Boy's Color (CCCD)

 「One Night Carnival」を始め、インディー時代のシングルやミニアルバムで既に発表されている曲が4曲含まれているが、このアルバムの素晴らしさを損なうものでは全くない。待望のセカンドアルバム。
 テレビや雑誌での綾小路翔の発言は、彼の頭のよさを物語るとともに、彼がその理想や目的のために必要なものを理解し、いかにそれを実践しているかということを教えてくれる。ここまで自覚的に、バンドの世界観や楽曲、音楽の醸し出すイメージを1ミリのブレもなく実現できる人は少ないだろう。
 タイトル曲も泣けるのだけど、星グランマニエの手による「330」が個人的には本作のベストトラック。胸をかきむしられるような切なく淡い恋愛の風景。車でもバイクでもなく「自転車」という言葉が持つ圧倒的なリアリティ。あの時代、あの年齢の時に自分が見た風景をここまで鮮やかに切りとって見せた曲を僕は知らない。グランマニエは本作で3曲の作曲を手がけており、その才能の片鱗を見せた。綾小路翔氣志團というバンドが綾小路翔&他の5人になることを決して許さないが、その心配はないだろう。それだけのキャラクターを各メンバーが持っているし、それ以上にメンバー各々が同じ方向で同じ目的を持っていて、結果「330」のような曲が生まれてくるのだから。バンドとしての結束の固さを感じさせるアルバム。氣志團現象はまだまだ終わらない。