無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

パロディは愛こそが全て。

1998-2003

1998-2003

 ドイツのバンドらしい。簡単に言うとビートルズをパンクでやるという、名前そのままのバンド。メンバーの名前がジョーイ・レノンだのシド・マッカートニーだのと、言ってしまえばビートルズラモーンズピストルズ。バカです(一応断っておくけど、誉め言葉です)。超高速ビートとギンギンのリフでビートルズナンバーが次々カバーされていく。ワンパターンといえばまさにそうだし、アイディア一発の企画モノといわれても納得してしまいそうだけど、本国ではこれが 3枚目のアルバムで、過去2作を合わせたベスト的な内容なのだそう。
 こういったパロディにはその対象に対する批評性とともに、まず何よりも愛と敬意がなくてはいけないと思う。そうでなければ単にいじって笑いものにしているだけの悪ふざけに堕してしまう。その意味で僕が数あるビートルズのカバー、パロディバンドの中で最も愛に満ち音楽的に優れていると思うのはダントツでザ・ラトルズである。モンティ・パイソンエリック・アイドルが仕掛けたコンセプトは最高の一言だし、元ボンゾ・ドッグ・バンドのニール・イネスが手がけた楽曲はどこから聞いてもビートルズであるのにどこから聞いてもオリジナルであるという、奇跡のマジックを有していた。パンクルズは本作でラトルズの「ホールド・マイ・ハンド」という曲をカバーしている。そして本作のジャケットは幻の「ブッチャー・カヴァー」のパロディだ。これだけで彼らのビートルズへの愛がわかろうというものだ。頭悪そうだけど、こういうところが妙にファン心をくすぐるのである。ラストにはパンクアレンジではなく極めて真っ当な「レイン」のカバーも収められている。意外としたたかで、マジな人たちなのかもしれない。
ザ・ラトルズ