人生はショウ。
- 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
- 発売日: 2003/10/31
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舞台は1920年代のシカゴ。ショービジネスのスターを夢見るしがない主婦、ロキシー・ハートはキャバレーのオーナーに顔合わせしてやるという不倫相手の言葉が嘘だったことに逆上し、彼を殺してしまう。刑務所に投獄されたロキシーは、そこで彼女が客席から見ていた憧れのスター、ヴェルマ・ケリーを見つける。ケリーもまた、夫と不倫していた妹を殺した罪で獄中にいたのだ。しかし、ケリーは敏腕弁護士ビリー・フリンの手で無罪を勝ち取ろうとしていた。ビリーはあることないことストーリーをでっち上げ、被告人を悲劇のヒロインとしてシカゴ一の有名人に仕立て上げ、世論が全て彼女の味方になるように仕向けるのだった。それを聞いたロキシーはなんとかビリーに弁護を依頼するのだが、果たして―。
ミュージカルシーンのほとんどは、ロキシーの空想の中のステージとして繰り広げられる。彼女にとっては自分も、ビリーも、ケリーも、獄中仲間も看守長も全てが空想の中のミュージカルの出演者なのだ。こうした演出は、はっきり言って『ダンサー・イン・ザ・ダーク(id:magro:20010105#p2)』のアイディアをそっくり持って来たと言っていい。正直、パクリと言われても差し支えあるまい。しかし、ミュージカルシーンを必然として物語の中に挿入するには、確かに有効な手法である。そして、きわめて映画的な手法でもある。『ダンサー〜』は、その意味でも大きなインパクトを持つ映画だったと言えるだろう。ミュージカルシーンの迫力、楽しさは圧倒的。自然と顔がほころび、ワクワクしてくる。監督のロブ・マーシャルは現在ブロードウェイのトップといわれる演出家/振付家だそうだから、それも当然か。そして何よりレニー・ゼルウィガーをはじめ、出演者の歌とダンスが素晴らしい。ビリー役のリチャード・ギアもいい。僕は彼の映画を見ていいと思ったためしがないのだけど、今作のような善人じゃない役の方がはまってるんじゃないだろうか。
マスコミを利用し、実にしたたかに世の中でのし上がり、生き残ろうとするロキシーとケリー。ニュースや報道はさながら現実と虚構の入り混じるエンターテインメント・ショウ。記者会見や裁判は彼女らにとって、スポットライトを浴び、役を演じきる舞台なのだ。この『シカゴ』のストーリーの元となったエピソードはなんと実話なのだそうだが、現代の世界も大して変わりはないのかもしれない、という気もする。