無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

オルタナという名の王道。

Strays

Strays

 ジェーンズ・アディクション、13年ぶりのオリジナル新作。実際は97年にレッチリのフリーとかが参加した新曲や未発表音源、ライブ音源などを収録した『ケトル・ホイッスル』があったわけだけど、まあ純粋なオリジナルという意味でアレはカウントしないことにする。2002年のフジロックでのメンバーから、ベースが変わっているみたい。
 ジェーンズというバンドが80年代末から90年代にかけて、オルタナ、そしてグランジに与えた影響の大きさというのはいまさら言うまでもないことなのだが、オルタナだなんだとか言うキーワードが全く出てこないほどにこのアルバムは王道と言っていいほどのロックサウンド、バンドサウンドで塗り固められている。ちょっとびっくり。しかしデイヴ・ナヴァロのギターは彼にとってここ数年でもベストのプレイだろう。シーンの趨勢とかこの10年のロックの歴史とかあまり関係なく、単純に今聞いてカッコいい音であると思う。
 かつてのジェーンズにあった予測不明の変態サイケデリック感覚は確かに影をひそめてはいる。このアルバムでシーンが大きく動き出すような、そんな革命性とも正直無縁と言っていいだろう。けれども、グルグルとうねるバンドグルーヴは健在だし、ペリー・ファレルの声はとてつもなくセクシーだし、バンドのたたずまいから感じるスケールのでかいきらびやかな「ロック・スター」感は逆に今のシーンでは異質なもののように思う。もともと「ポップスター」にはなりたくない、と言って解散したはずなのだけど、逆にロックバンドが等身大のそこらへんにいる兄ちゃんどもばかりになるとそれに対抗するようにジェーンズが復活すると。そういう意味では今のシーンにおけるオルタナ、としてこのアルバムは聞くことができるということかな。すっげえこじつけですが。しかしおそらくは本人たちも少なからず意識しているであろう「ロック・スター」の復権を、個人的には支持したい。友達と肩組んで馴れ合いのロックなんて聴けるかよ。なあ。