無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

シリアス・パーティー。

Wolf

Wolf

 インパクト抜群のジャケット写真と見事な邦題と対訳、そしてあけっぴろげにバカ一直線の楽曲とアレンジで笑いと感動の渦を巻き起こしたファーストから1年半、ついに待望のセカンドアルバムが到着した。しかし、彼がただのパーティー・アニマルではなく、とことん真面目で真摯なアーティストだと言うのは、何度かの来日での振る舞い、そしてインタビュー記事などから日本中のロックファンが既にわかっていることだろう。
 今作は前作のように徹頭徹尾フルスロットルで駆け抜けるパーティー・アルバムではなく、彼のそのシリアスな面が強調されたものになっている。ミドルテンポの曲が多くなり、彼のメッセージもより深く、彼のアーティストとしての核心に迫るものになっている。そのメッセージとは要するに「誰が何と言おうと自分の信じる道を進め!」「自分のやりたいことをやれ!」「決してあきらめるな!」ということであり、「自分の力で未来を切り開き、人生をエンジョイするんだ!」ということだ。彼の言う「パーティー」とは、精一杯生きる人生そのものの比喩なのである。シンプルなメッセージを面と向かって語りかけてくるその暑苦しさは、「漢」と書いて「おとこ」と読む感の弱い人間には拒絶されるタイプのものかもしれないが、そんなものは関係ない。一晩中酒飲んで語って、いくらでも悩みを聞いてくれそうなそんな兄貴ぶりがとにかくたまらないのだ(メッチャ年下だけど)。こんなに友達になれそうなアーティストはそうそういない。
 メロディーはアニメソングか、アメリカの校歌(聞いたことないけど)かというくらいわかりやすく力強い。そしてサウンドは相変わらずギターもドラムもキーボードもとにかく80年代メタルまんまの音(これがまた楽しくてうれしい)。ジャケットもギミックなし。きりりと見据えたその目には彼の本気(ポンゲ)が漲っているじゃないか。彼の愛すべきキャラクター、彼の本質が誤解なく真っ直ぐに届く、一本気でバカで、そして感動的なアルバムだと思う。ここまで来ると、無理矢理つけたようなバカな邦題が余計なものにすら思えてくる。マジで泣けるよ、これは。