無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

異端である覚悟。その先にある希望。

ANSWER (通常盤) (CCCD)

ANSWER (通常盤) (CCCD)

 1曲目「FREE HAND」のトライバルなリズム処理からして今までスーパーカーでは聞いたことのない新しい試みが行われている。しかしそれが実験としてではなく明確な成果として鳴っていることに感嘆する。前作『HIGHVISION』で、打ち込みによるサウンドとしてはひとつの到達点を見た彼らは、「バンドの原点に戻る」いわゆるロックバンドのフォーマットでレコーディングを行ってきたようだ。が、今作のサウンドもやはりそんな単純なものではなく、明らかに『Futurama』〜『HIGHVISION』を経た上でのバンドサウンドになっている。前作に続き益子樹がレコーディング/ミキシングを行っているが、ドラムとベースが強調されるのと同時に、ギターのカッティングやリフも非常に鋭く切り取られている。曖昧な部分がなく、一つ一つの音の輪郭がはっきりと見える明確なサウンドは聞いていて実に小気味いい。そして前作において極限にまで削ぎ落とされた歌詞は、日本語と英語を行き来する新たなスタイルを与えられ、さらに自由にイマジネーションと語感と五感を広げることに成功している。アクロバティックとも言える離れ業をしれっとした顔で決めてしまう所はなんとも心憎い。
 今更言うまでもないことだけど、スーパーカーの音楽に対するスタンスは実にストイックだ。安易な共感や共同意識による安心などとは無縁の境地である。常に自分らの足元を見つめ、時代の真ん中、つまりは音楽シーンからはつかず離れず絶妙な距離を取ってきた。時代がストレートなら端を行き、時代が横に逸れれば王道を貫く。「僕は謀反のdiscord/不穏なdiscord」なんと力強く確信に満ち、核心をついた宣言だろうか。身震いするほどロックだと思う。
 これまで以上に明確な攻撃性と、革新的なサウンドビジョンに貫かれたアルバムに冠せられたタイトルが『答え』ときた。不遜なまでの自信。しかし、その先に彼らが今まで追い求め描こうとしてきたのと同じ大きな光があることを疑う余地はない。