無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

変わらないもの。の強さ。

スーベニア

スーベニア

 様々なバンドの解散をたくさん目にしてくると、必ずしも長く続けること自体がバンドにとっては幸福なことではないということがわかってくる。が、少なくともスピッツにとってはここまで続いてきたことは間違いなく幸福だし、これからも続いていくことが彼らにとっても幸福なことなのだと言い切れる。通算11枚目のアルバムを聞いて思ったのはまずこういうこと。
 デビューして15年以上経つバンドで、メンバーチェンジもなしに第一線で活躍し続けているバンドなど、ぱっと見渡してみればスピッツの他、いくつかの名前が思い浮かぶくらいだ。それだけでも十分賞賛に値するものだとは思うけど、スピッツがすごいのは草野正宗の創る楽曲に対するメンバーの信頼がビタ一文変わっていないところだ。そう言わしめるだけの曲を作り続ける正宗という人もすごいが、普通はなかなか口に出せるものではない言葉を臆面もなく言えてしまうメンバーもすごいと思う。こういう関係性がスピッツというバンドの真の財産なんじゃないかという気がする。
 亀田誠治との関係は本人たちにはかなりお気に入りのようで、前作の路線を踏襲した上で沖縄やレゲエなど毛色の違うサウンドにもチャレンジしているが、もはやスピッツにとってそんな表面上の曲の体裁などあまり関係はない。なかなかこういう境地まで達してしまえるバンドはいない。細かいサウンドのことよりも、この年齢になってさらにまた新鮮な気分で脱皮していこうとするような歌詞が才気だっている。
 ロックなのだから周りから浮いて浮いて浮きまくってなんぼである。そしてポップであるのだから力の限りあのキラキラの方へ登っていくのである。よく考えるまでもなく、スピッツとはそういうバンドなのであった。えらいと思う。