無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

■RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO感想(3)~耳から飛び出る昇り龍

■2017/8/12@石狩湾新港特設ステージ

 朝起きると、結構な勢いの雨。昨夜から降り続いていたらしい。予報を見ると日曜の朝まで降るらしい。というわけで上下レインコート、長靴を装備して完全武装で臨むことにする。会場についてもやはり雨。会場外駐車場に車を止め、テントエリアに向かう。同行の友人たちはテントの中にいるのか、いないのか。とりあえず、雨の会場がどんな感じなのか探索に出た。雨が激しかったので本来なら朝食でにぎわう屋台も閑散としている。そんな中行列ができているのはやはりニセコピザ。名物のベーコンエッグロールを食べなくては、やはり一日が始まらない。雨が滴る中、木陰に入って無理矢理食べました。それでもやっぱり美味かったです。普通なら朝からでも長蛇の列になるいちごけずりもすぐ買えた。
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土砂降りの中キメた。雨混じりでもやっぱり美味い。
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全然並んでないよ!

 ちょうど祭太郎のラジオ体操が始まりそうな時間だったので行ってみると、「雨に負けるなー!」的な演説を声の限りにしておりました。そしてラジオ体操へ。雨の中わざわざ集まった酔狂な人たちに、祭太郎からタオルのプレゼントが。ありがたく使わせていただきました。
 多少弱まる時間帯があるくらいで、雨は一向に止む気配がない。フェスなのでこういう時もある。そしてこういう時は腹をくくってこれもまた一興と土砂降りのフェスを楽しむしかない。そのための雨具の準備であり、完全武装だ。とはいえずっと外にいると寒いので喫煙所ブースで雨宿りしたりレッドスターカフェで温かい飲み物を飲んだりする。ほどなくしてレッドスターでこの日のオープニング、スクービードゥーのリハーサルが始まった。サウンドチェックからMOBYのドラム、「ダ・チーチーチー」が炸裂してアガりまくり。そして山下達郎RIDE ON TIME」や小田和正ラブストーリーは突然に」などを本意気でやるという熱の入ったリハーサル。「もうちょっとしたら本物のスクービードゥーが出てきますんで」というジョークで捌けていった。そして本編。雨の中集まったお客さんは彼らの音で踊りたくて来ている。そして雨も関係なく、色とりどりのレインコートや雨合羽で踊る。バンドも躍らせる。その共犯関係が楽しい。4月にリリースされたシングル「ensemble」に収録された「Last Night」にまつわるエピソードが印象的だった。彼らは現在自ら設立したCHUMPレコードというインディーレーベルを運営し、マネージメントも自分たちで行っているが、それ以前は山下達郎が所属する「スマイルカンパニー」という事務所に所属していた。独立する際に山下達郎に挨拶に行き、かけられた言葉が今も忘れられないという。「他には負けないという、自分たちだけの武器を見つけてそれを磨きなさい」「日本全国には君たちの音楽を待っている人が必ずいる。そういう人が一人でもいる限り、その人に向けて演奏しなさい」ということを言われたのだそうだ。「Last Night」はこのエピソードをそのまま歌詞にしたのだという。彼らのステージがなぜいつも熱いのか、その理由がわかる気がした。10月にリリースのニューアルバムからも1曲演奏した。後半はガンガンに盛り上げて、デビュー曲「夕焼けのメロディー」でしめる。雨関係なく踊ったし、楽しい。そしてライジングサンというフェスに対する愛もビンビンに感じる、いいステージだった。

SCOOBIE DO
1.アウェイ
2.真夜中のダンスホール
3.ensemble
4.Funki''S''t Drummer
5.バンドワゴン・ア・ゴーゴー
6.Last Night
7.Cold Dancer(新曲)
8.新しい夜明け
9.Back on
10.夕焼けのメロディー

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今年は会場外駐車場なもんでこっちから入ることがほとんどない。
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グッズ売り場前。2010年を髣髴とさせる田んぼ具合。

 16時からPROVOテントにて中村達也独り叩きという、激しくそそられるステージがあって、それまでは特に予定なし。なので、タバコ吸ったり軽く食べたりしつつ雨の会場内をぶらぶらする。今年は会場外駐車場なのでメインのヘブンズゲート側から入場していない。あのゲートの所で写真撮るのが恒例なので、一度行ってみることに。すると、メインゲート付近が雨で完全に水没していた。今日から参加の人たちも当然いるわけで、そういう人たちは荷物持って台車引いて、まずこの水たまりとはもはや言えない単なる沼を通らなくてはいけない。何という試される大地。ピンバッヂガシャやグッズ売り場の方も完全に水田化していて、2010年の大水害を彷彿とさせる。JTやコールマンブースのすぐ隣にあるクリオネのテントエリアではテントが水没しているところも散見された。来年以降の場所取りにも影響しそうな、雨の被害だった。
 中村達也独り叩き。小さなPROVOテントにドラムセットのみが置かれている。ステージと観客の距離はほんの数m程度。こんな至近距離で達也のドラムが見れる機会はそうそうないだろう。中村達也はドラムセットに座り、おもむろにプレイを始める。時に激しく、時にスローダウン、時折声を上げながら40分間叩き続けた。正真正銘ドラムのみ、ゲストや他の楽器、音は一切なし。凄まじい時間だった。中村達也は彼がドラムを叩くだけでロックンロールを体現できる次元まで来ていると思った。というか、これはもう舞踏とか書道とかそういう芸術や匠の世界にむしろ近いのじゃないかという気もする。外に向かって発散するというよりはストイックに自己探求するようなものなんじゃないだろうか。少なくとも上手いとか下手とかそういう所で彼はプレイしていないと思う。すごいと思ったし興奮したけど、それ以上にその気迫にあてられてしまったような、そんな時間だった。

 ちょっと気を落ち着かせてからデフガレージに。生で見るのは多分8年か9年ぶりだろうZAZEN BOYS。先に見た中村達也独り叩きにも通じるが、彼らもまたどこか修行僧のような雰囲気が漂うバンドである。向井秀徳の前にはキーボードはなく、ギターオリエンテッドな編成のようだ。久々なこともあって、演奏が始まっても何の曲かわからないことが多かった。軸になるアレンジそのものが大きく変わったわけではないのだけど、導入や間奏に関しては相当、変化してきている印象だ。しかし細かな変拍子が入り乱れるテンション高い演奏はやはりさすがとしか言いようがない。「COLD BEAT」の間に「泥沼」を挟んだメドレーが凄まじかった。ギターの吉兼がベース吉田一郎に口三味線で何度もリフを伝えるところがたまらなくZAZEN BOYSだった。いやギター弾けよって話なんだけど、全員の中でビートとフレーズが共有されてないと演奏が崩壊してしまうというギリギリのバランスの中で彼らの演奏は成り立っている。ライヴではそのヒリヒリした感じがよく伝わってくる。彼らのライヴを見るといつもキング・クリムゾンが頭に浮かんでくる。それはリフ主体の演奏だとか変拍子を多用するとか表面的な話ではなくて、このグルーヴを体得するまでに積み上げた訓練・鍛錬(=Discipline)の密度が透けて見えてくるからだと思う。本当にストイックなバンドだと思う。もっと長い時間で見たかった。

ZAZEN BOYS
1.Fender Telecaster
2.HIMITSU GIRL'S TOP SECRET
3.COLD BEAT~泥沼
4.Fureai
5.RIFF MAN
6.破裂音の朝
7.自問自答

(続く)