無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ひとりじゃないの。

奥田民生 MTRY TOUR 2018
■2018/06/02@わくわくホリデーホール

奥田民生という人は、そのリラックスした雰囲気と音楽に対する自由なアプローチで、多くのファンやアーティストからリスペクトされている。

その自由さは、2015年に自身のレーベル「ラーメンカレーミュージックレコード」を設立して以降、さらに顕著になっている気がする。

以前行ったツアー「ひとりカンタビレ」と、その後のアルバム『OTRL』をさらに進化させたようなプロジェクト「カンタンカンタビレ」などはそのいい例だろう。その手軽さとスピード感は、メジャーのレコード会社ではなかなか難しいものかもしれない。

宅録の過程を見せてしまう(そして配信してしまう)というのは、もちろん、全ての楽器を自分で演奏できてしまうマルチプレイヤーぶりがあってのことだ。

しかし、忘れないでほしい。

13年前、つまり、今のライブバンド「MTR&Y」のスタイルになるまで、奥田民生のライブはもう一人のギタリスト、長田進氏がいた。MTR&Yとなり、ライブでのギターを民生ひとりでやるとなった時には、メディアやファンから「大丈夫か?」という声が聞かれたほどだ。

ぶっちゃけ言えばその頃まで、ボーカリスト、ソングライター、プロデューサーとしての奥田民生よりも、ギタリスト奥田民生は低く見られていたと思う。しかし、そんな声はすぐになくなった。

当時、「過小評価されている日本のギタリスト」ランキングがあったら、奥田民生はかなり上位に来ていたと思う。

何が言いたいかというと、奥田民生は非常に優れたギタリストであり、またどの楽器も演奏できるマルチプレイヤーである民生がギタリストに徹してライブを行う場がMTR&Yであり、今回のツアーはそういうプレイを十分に満喫できる場所であったということです。

始まった!と思ったら2曲目でいきなり「イージュー☆ライダー」をかまし、「今日はどうもありがとうー!」と大団円を演出する民生。2曲で終わりって、どこの安全地帯*1だよ!とツッコんでいると「ここからはアンコールになります。ちょっと普通のアンコールよりも長いと思うんですけど。」と民生。ここからのアンコール(笑)が、非常によかったです。

特に「海猫」「白から黒」「鈴の雨」あたり、中盤のミドルなナンバーがとても聞き応えがあった。民生のスローなギターソロは実に味があっていいのです。

弾き語りの「ひとり股旅」、全部演奏する「カンタビレ」、1/5であることを楽しむユニコーン。そしてこのMTR&Yは、民生の活動形態の中で最も、ボーカル&ギターに徹してロックを追求するスタイルだと思う。どの民生も僕は好きだけど、MTR&Yでレスポールを弾いている民生が最高にカッコいいと思う。そう思わせてくれるようなライブでした。

ちなみに民生は故レス・ポール氏にサインをもらったことがあるのだけど、"Tamio"の"a"が抜けて"Tmio(トゥミオ)"になったそうです。オクダトゥミオ、最高でした。お疲れ様でした。

■SET LIST
1.MTRY
2.イージュー☆ライダー
3.フリー
4.エンジン
5.KYAISUIYOKUMASTER
6.歩くサボテン
7.ミュージアム
8.サケとブルース
9.ゼンブレンタルジャーニー
10.海猫
11.白から黒
12.鈴の雨
13.イナビカリ
14.ルート2
15.俺のギター
16.いどみたいぜ
17.最強のこれから
18.ヘイ上位
<アンコール1>
19.愛する人
20.解体ショー

サボテンミュージアム

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【DIYでアナログレコーディング】奥田民生「カンタンカンタビレ」

*1:安全地帯が2曲しかやらなかった2015年のライジングサンロックフェスティバルでの惨劇のこと