2018年・私的ベスト10~音楽編(2)~
洋楽編です。邦楽編と同じく順位は無しで、5枚選んでいます。何となくですがジャンル的にうまいことばらけたセレクトになった感じです。
Years&Years『Palo Santo』
2018年はフジロックにも出演したイヤーズ・アンド・イヤーズ。本作は未来の架空の惑星「パロ・サント」を舞台としたコンセプト・アルバムになっています。
リリースに先駆けて公開されたショート・フィルムでもオリー・アレクサンダー自身が主演し、ジュディ・デンチがナレーションをつけるという力の入れよう。人間が奴隷のように売買されているディストピア的な世界の中でカリスマ的に崇められるダンサーをオリーが熱演しています。
こうしたコンセプトが前面に出ると単純にダンス・ミュージックとしての機能性が失われる可能性が高いのだけど、本作はうまく回避しています。歌詞を見なければそんなに重いストーリーを歌っているとは思えません。
本作のコンセプトにはゲイをカミングアウトしたオリーの個人的なストーリーが反映されていると思うのだけど、決して踊れる部分に目をつぶっていないのがいいと思います。「ハレルヤ」はDJでも結構かけさせてもらいました。
Drake『Scorpion』
今のアメリカの音楽シーンはほぼヒップホップがチャートのトップを占めています。中でも最も売れているのがドレイク。
時代が違うので何とも言えませんが、ビートルズのチャートイン曲数記録や年間1位獲得回数などの記録を塗り替えるというのはすごいと思いますし、2018年はまさにドレイクの1年だったと言えるのではないでしょうか。
正直日本のドメスティックなロックやJ-POPシーンを見ているとドレイクの何がそんなにウケているのかわかりづらい面もあります。外見も含めたイケてなさを隠さない正直さはいいと思うし、ティーン・アイドルからラッパーというキャリアも、所謂ストリート系のヒップホップとは違います。どこにいても批判は来るし、こういう腰のすわりが悪いスーパースターというのはある意味今の時代を象徴しているのかもなあ、という気がします。
Young Gun Silver Fox『AM Waves』
Young Gun Silver Fox - Take It Or Leave It (Official Video)
UKのソウル・ファンク・バンド、ママズ・ガンのアンディー・プラッツと、トミー・ゲレロやエイミー・ワインハウスの楽曲を手がけてきたショーン・リーの二人によるユニットのセカンド・アルバム。前作も70年代のAORやディスコ・サウンドを堂々とリバイバルした快作でしたが、本作も素晴らしかったです。パッと聞いて2018年にリリースされた音楽とは思えないレトロっぷり。
その気持ちよさ、カッコ良さにはあらがえないのです。単純に好みです。リアルタイムでその辺の音楽に触れていた世代はもちろん、懐古的に彼らの音楽を愛でるのでしょう。しかし若い世代でも80年代以前の音楽への興味は広がっています。普通に、今聞くべき音としてこういうものもアリなのではないでしょうか。サブスクリプションであらゆる時代の音楽にアクセスできる現在は逆にそういう時代なんじゃないかなと思います。
Janelle Monae『Dirty Computer』
Janelle Monáe - Screwed (feat. Zoë Kravitz)
『ムーンライト』や『ドリーム』で女優としてもその地位を固めた感があるジャネール・モネイ。本業のシンガーとしてリリースした最新作です。
先行シングル「Make Me Feel」がプリンスの「Kiss」に似ていると言われてましたが、実際にアルバムに生前のプリンスが参加していたという話ですね。その他、ブライアン・ウィルソンやファレル・ウィリアムス、レニー・クラヴィッツの実娘であるゾーイ・クラヴィッツなど豪華なゲスト陣が参加しています。
決してヒップホップ・オリエンテッドではないR&Bやソウル・ミュージックという意味でも本作がヒットした意義は大きかったと思います。内容的にも文句のつけようがない素晴らしいものでした。
Mitski『Be The Cowboy』
Mitski - Nobody (Official Video)
ミツキはアメリカ人と日本人のハーフであるミツキ・ミヤワキのソロ・プロジェクト。本作は5枚目のアルバムということになります。
コンテンポラリーな洋楽から松任谷由実や中島みゆき、椎名林檎などからも影響を受けたというそのソングライティングは非常にユニーク。しかし決して日本的な情緒に流されるわけではなく、どこか乾いたシニカルさも持ち合わせています。
気だるく、しかし軽さを失わない彼女のボーカルはとても魅力的です。そしてサウンド的には非常にオーソドックスなギターポップ。どこか90年代前半のオルタナティブを思わせる雰囲気があります。
全体に漂う孤独感や寂しさは米国在住の日米ハーフという彼女自身の生い立ちにも関係しているのかもしれません。こういう「居心地の悪さ」というのは今後さらにポップミュージックの大きなテーマのひとつとなっていく気がします。
以上です。
更新頻度は相変わらずだと思いますが、今年もよろしくお願いします。