無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

2021年・私的ベスト10~音楽編(2)~

前回に続いて、洋楽から5枚です。

Van WeezerWeezer

ウィーザーによるハードロック(HR)・ヘヴィメタル(HM)へのオマージュ・アルバム。元々は2019年リリースの80sカバーアルバム『Teal Album』に続く企画盤として計画されていたものです。コロナでリリースが遅れ、2021年リリースとなりました。結果的には2020年に亡くなったエディ・ヴァン・ヘイレンに捧げる形でタイトルがつけられています。
本作が素晴らしいのはカバーではなく全曲オリジナルであること。70年代~80年代のHR/HMを巧みに引用し、見事にあの時代あのジャンルのサウンドを再現しています。ビートルズに対するラトルズのような意識で作られたアルバムとも言えるでしょう。細かく見ればあの曲のリフだとかこの曲のソロだとか引用元をあげることはできますが、それは無粋というもの。リヴァース・クオモの青春時代を彩ったであろうサウンドへの愛情に溢れていて、ホントに楽しいアルバムでした。

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Cavalcade/black midi

イギリスのインディーバンド、ブラック・ミディの2作目。僕は本作で初めて彼らを知ったのですが、先行シングル「John L」一発でぶっ飛ばされました。
ポスト・パンクプログレの流れを汲んだヘヴィーなサウンド、スピード感あるリフ、押し寄せる変拍子とブレイクの嵐。80年代のキング・クリムゾンを彷彿とさせる部分もあり、ZAZEN BOYS辺りが好きな人なら絶対にハマる曲だと思います(狂ったMVも一見の価値ありです)。
ジャズの即興性を感じさせながら恐らくは緻密に構成され鍛錬(=Dicipline)の果てに生み出された音楽なのではと思います。今年聞いた中では最も「素面でトベる」音楽であり、中毒性に満ちたアルバムでした。

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SOUR/Olivia Rodrigo

SOUR

SOUR

オリヴィア・ロドリゴのデビュー・アルバム。元々は女優としてキャリアをスタートさせた人ですが、まだ18歳。本作では全ての曲のソングライティングに関わっています。サウンド的にはベッドルームミュージックのような打ち込みもありながら、基本的には生音重視のオルタナティブ・ロック/ポップという印象で、陰影があって伸びのある歌声はとても魅力的です。ティーンならではの恋愛や悩みや葛藤を歌った曲が多く、彼女が影響を受けたというテイラー・スウィフトのかつての姿を思わせるところもありますね。2年前がビリー・アイリッシュの年だったとするなら2021年はオロヴィア・ロドリゴの年、というくらいの活躍でした。

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MONTERO/Lil Nas X

MONTERO

MONTERO

  • LIL NAS X
  • ポップ
  • ¥2139
リル・ナズ・Xのファースト・フルアルバム。2019年に「オールド・タウン・ロード」がビルボードで19週連続1位の新記録を樹立しましたが、正直一発屋で終わるんじゃないかという気もちょっとしてました。ただ、同曲がカントリーチャートから削除された後にカントリー界の大御所であるビリー・レイ・サイラスをフィーチャーして再度チャートインさせたり、白人保守層が主なリスナー層であるカントリーチャートをにぎわせたタイミングでゲイであることをカミングアウトするなど、様々な仕掛けは周到な計算を感じさせるもので、単なるトリックスターではないなとは思ってました。
本作は自身の本名をタイトルにし、生身のアーティストとしてさらにダイレクトで際どい表現に踏み込んでいます。刺激的なMVもそうですし、自身のセクシュアリティや置かれた状況を巧みに曲に落とし込んで周囲を巻き込んでいく魅力が彼の音楽にはあると思います。サウンドもヒップホップだけではなくダンスミュージックやシンプルなポップスなど多岐にわたっていて、いろんな意味で今後も様々なジャンルの壁を壊していってくれそうな気がします。

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An Evening With Silk Sonic/Silk Sonic

An Evening With Silk Sonic

An Evening With Silk Sonic

ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークによるユニット、シルク・ソニックのファースト。間違いなく2021年最もリピートして聞いたアルバムです。
デビューシングル「Leave The Door Open」からして、70年代のフィリー・ソウル、スウィート・ソウルそのものなサウンド。ここ数年シーンを席巻している80sをすっ飛ばして70年代に行ってしまいました。しかしこれが本当に気持ちいい。続く「Skate」ではブラック・スプロイテーション映画を思わせるロゴやテロップが画面に踊り、カーティスを思わせるソウル・ファンクがこれまた気持ちいい。そう、このアルバムは徹頭徹尾気持ちいいんです。アンダーソン・パークも本作ではポリティカルなメッセージ性は抑えてます。全体で見れば回顧趣味オンリーではなく現代的なサウンドの要素も入ってはいますが、あくまでも主体は70年代ソウル。全9曲約30分というコンパクトなアルバムですが聞き応えと濃密さは十分です。果たして本作は2020年代の『ランダム・アクセス・メモリーズ』たりえるのか。今後も注視していきたいところです。


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以上です。ありがとうございました。
最後に、Spotifyで2021年よく聞いた曲プレイリストを作りましたので散歩のお供にでも。31曲、約2時間です。
2022年もいい音楽にたくさん出会えますよう。