無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

DA、収穫の時。

HARVEST

HARVEST

 前作『LILY OF DA VALLEY』から実に2年4ヶ月ぶりのアルバム。ツアーはやっていたし、決して活動自体が止まっていたわけではないが、度重なるリリースの延期など、イマイチ順調ではなかったことは確かだろう。例のキングギドラの曲の話や周囲の雑音もあり、降谷建志自身が素直に音楽に向かう理由を失っていたという感じすらする、それだけの長いインターバルだ。そしてその間にツアーサポートメンバーだったギタリストが正式メンバーになった。ドラムンベースを基調としたダンサブルな曲が多いことや、パンクっぽい縦ノリの高速ナンバーが少ないなど、今作での音の変化をいくつか挙げることはできる。面白いのは、そういう音がやりたくてメンバー編成が変わったのではなくて、新加入のメンバーに合わせてサウンドが変化していったという、通常のアーティストとは逆のアプローチだということだ。あくまでも人、メンバーありき。降谷にとってバンドというのはそういうものなのだろう。
 誰かのために曲を作るとか、皆を啓蒙したいからこういうメッセージを歌うとか、そういう動機は珍しいものではない。でも、そうではなく、単純に自分が作りたいから作る。そんな素直な力が今回、降谷建志を突き動かしているのじゃないだろうか。とにかく、何か無理していたり肩肘張っている感じが全くしない。このアルバムはこれまでのドラゴンアッシュの作品で最も穏やかで美しいアルバムだ。今までのDAの曲ならば、この曲はヒップホップ、この曲はパンク、この曲はロックンロール、というように結構わかりやすく色分けされていた感じだけど、本作ではそうではなく、1曲1曲の中にヒップホップもパンクもメロウも全て入り混じっている。ジャンルがどうではなく、もうドラゴンアッシュとしか言いようのない音楽になっている。本作までいろいろ紆余曲折はあったのだろうが、この音楽を手にできたのなら、まさにそれは「HARVEST」と呼ぶにふさわしい収穫の時期を迎えているということなんだろう。でも、成熟なんていうには kjはあまりに若すぎるのだけど。