無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ロック仙人の極意。

HOTEL TIKI-POTO

HOTEL TIKI-POTO

 勢いで押すのではない。収められた14曲のうち大半はミドル〜スローナンバーだ。演奏時間もこれまでのハイロウズからして決して短くはない。でも全く退屈だったり冗長な感じはしない。それは無駄なものがないからだ。ヒロトの体のように、余分な贅肉が一切付いていない。今までもハイロウズはそういうものだと思っていたが、まだ行けたということだ。メロディーも音も言葉もスカスカだが、残ったのは必要最小限の本質のみ。ゴテゴテに飾り立てたミクスチャーが 2001年現在最高のロックミュージックだと思っている人はこのアルバムを聞いて少し考えてみるといい。
 「十四才」はあのフレーズでもってやはり奇跡の名曲として鎮座しているが、驚くべきは他の曲にも全て同じようなマジックがきちんと用意されていること。ヒロトマーシー作に限らずだ。ライブでの押し引きは関係なく、この二人はきちんと同調して拮抗して本質を追い求めている。そしてバンド全体がそれを音像化するために同じ歩調で進んでいる。決して衰えぬ探求心には敬服するばかりだ。しかしそれがもうミュージシャンとしての彼らの血肉となっていることがこのマジックを可能にするのだろう。それは誰も追いつけない、仙人のような境地だ。
 ところで、「フルコート」は個人的にアレン・アイバーソンのテーマ曲としてぜひとも認定したい。というか、ヒロトは絶対今年のNBAファイナルを見てこの曲を書いたに違いない。と思うんだけど、いかが。