無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

心地良きゆらぎ。

Cornelius Mellow Waves Tour 2017
■2017/10/13@札幌ペニーレーン24

 新作『Mellow Waves』がオリジナルとしては実に11年ぶり、ライブツアーで札幌に来るのも実に10年と7か月ぶり。ただ、夏にフェスで一度ステージを見ているので新作の曲をステージで演奏するイメージは何となくできていた。そう、今年のコーネリアスは新作のリリースパーティーを7月に行い、夏フェス行脚をしてからのこのツアーである。下準備は整っていて、ツアー序盤とは言っても演奏の習熟度は高いと言っていいと思う。そういう期待を込めてのライブだった。
 ステージ前には白いスクリーン。開演前から、そこにゆらゆらと動く円環状の波が映し出されている。客電が落ち、あらきゆうこのドラムが鳴り出すとそれにシンクロして波の形状が変わっていく。前回『Sensuous』のツアーは「Synchronized Show」と銘打たれていて、文字通り映像と演奏のシンクロ率の高さがライブの目玉だった。しかし今回はもうそれは当たり前のことになっていて、それをどう発展させるか、どう見せるかという試行錯誤が見えた。前作までの曲に使われる映像は基本的に変わっていないので安心感はあるけれど驚きはない。ただ、前回のツアーからは10年以上、『Point』時の映像だともう15年以上が経過しているのに古さやダサさを感じさせないのはすごい。今見ても改めてカッコいい。
 『Point』『Sensuous』ではサウンドのコラージュ感が強く、それに伴って歌詞は単語や音節にまで分解され、全体としての意味よりも発語、発音を楽器音の一つとして処理するような感覚だったと思う。新作『Mellow Waves』はボーカル曲での歌モノとしての比重が高く、歌詞も自らではなく坂本慎太郎(exゆらゆら帝国)に依頼し今までと違うラブソングがあったりと、意識的に新しいことをやっている。どこか幾何学的にサウンドを構築していた前作までと変わり、よりエモーショナルに、人間的な揺らぎをイメージしていると思う。ライブでシームレスに曲が演奏されると、その「揺らぎ」がより見えてくる気がする。小山田圭吾のギターもブルースやフォークっぽい感じのソロが増えるのだ。
 堀江博久大野由美子Buffalo Daughter)、あらきゆうこはコーラスのスキルも高く、マルチプレイヤーでもある。おそらく打ち込みやテープに頼らず殆どの音を4人だけで演奏していたと思うのだけど、タイミングやブレイクもばっちりでここもシンクロ率が高いと感服。幾何学的、と言った過去曲も、生演奏だとやはり血の通った音に聞こえてくる。人間が組み立てる構造物の美しさみたいなものが見えてくるのだ。聴覚だけでなく視覚でも刺激を受ける立体的なショウとして文句なしのクオリティだと思った。いいものを見させていただきました。

■SET LIST
1.いつか/どこか
2.Helix/Spiral
3.Drop
4.Point of View Point
5.Count Five or Six
6.I Hate Hate
7.Wataridori
8.The Spell of a Vanising Loveliness
9.Tone Twilight Zone
10.Smoke
11.未来の人へ
12.Surfing on Mellow Wave pt 2
13.夢の中で
14.Beep It
15.Fit Song
16.Gum
17.Star Fruits Surf Rider
18.あなたがいるなら<アンコール>
19.Breezin'
20.Chapter8~Seashore And Horizon
21.E