無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

煮詰めてこそのシロップ。

syrup16g COPY発売16周年記念ツアー 十六夜<IZAYOI>
■2017/10/25@ペニーレーン24

 2001年発表のアルバム『COPY』。シロップ16gの1stフルアルバム。彼らが世の中に注目されるきっかけとなった作品であり、代表作と言っていい。そして個人的には、2000年代の邦楽ロックで10枚選べと言われたら絶対に入る傑作であると思う。その『COPY』のリリース16周年を記念しての今回のツアー。「十六夜」という名前の通り、全16回公演が予定されている。この札幌は第七夜で、前半のトリとなる。ツアー後半は2018年2月に再開される。
 シンプルなギターのSEでメンバー登場。そのまま、SEのギターに乗せて「She was beautiful」へ。続けて「無効の日」。この冒頭の2曲でああ、今日来てよかったと思った。中畑が立ち上がり、MCを行う。「日本で最高の3ピースロックバンド、シロップ16gです」大歓声。「こうやって自分たちの首をしめていかないとなかなか本気出さない不器用なバンドなので」。そして今日の札幌がツアー前半のトリということで、五十嵐に対し「今日仕事納めでしょ?」といじる。メンバー紹介で最後に五十嵐を紹介しようとしたところですかさず「Drawn the light」のリフを弾きまくる五十嵐。久々に顔を見たけど、元気そうで安心した。
 当然ながら、『COPY』からは全曲演奏。本編は『COPY』から2曲、他から1曲というパターンを繰り返す。間に入る曲も初期の曲から再結成以降の曲まで幅広い。ただこうして『COPY』の曲をまとめてどっしりとライブで聞くとやはりもうここにシロップというバンドのエッセンスは全てあると言ってしまっていいのではないかと思う。個人的な思い入れがあるのは否定しないけど、それだけではないと思う。その後のシロップの名曲、傑作も結局は『COPY』の再生産のようなものなのではないか。言葉は悪いけど否定的な意味ではなく、五十嵐が曲にしたいことなんて『COPY』の10曲で十分なんじゃないかと思うのだ。それを別の角度から見たり言い方を変えたりしているだけなんじゃないか、と。『COPY』というアルバムはそれだけ絶対的なものなのだと思う。ファンにとっても、バンドにとっても。未発表曲集『delaidback』からも演ってくれたが、どの時代の曲を聞いてもここまで印象が変わらないバンドも珍しいと思う。
 シロップというバンドは永遠のモラトリアムみたいなバンドだと思っていて、少なくとも五十嵐にとっては青春そのものだし良いことも悪いことも全部ここにあるような場所だと思う。3年前にそれを再始動させたのはどういう意図や心境の変化なのかはわからない。もしかしたら何かを先延ばしにするだけなのかもしれない。同じことを繰り返しているだけなのかもしれない。それでも僕は、シロップ16gというバンドが活動している方が、五十嵐隆という人が世界と繋がる場所がある方がいいと思う。

■SET LIST
1.She was beautiful
2.無効の日
3.Sonic Disorder
4.君待ち
5.デイパス
6.サイケデリック後遺症
7.(I can't) Change the world
8.Drawn the light
9.My Love's Sold
10.生活
11.負け犬
12.宇宙遊泳
13.パッチワーク
14.土曜日
<アンコール1>
15.Star Slave
16.Share the light
17.vampire's Store
18.落堕
<アンコール2>
19.Deathparade
20.coup d'Etat
21.空をなくす
22.真空
<アンコール3>
23.翌日

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